「奢ってもらえるんだよね」同僚たちが称えた久保建英のFK弾。選手間の不和が囁かれていたマジョルカの“良薬”に…【番記者の視点】

2022年01月19日 エレナ・ガルシア

「タケのガキンチョが、私を見るなり…」

窮地のチームを勢いに乗せる一撃を叩き込んだ久保。見事に違いを作り出した。(C)Mutsu FOTOGRAFIA

 コパ・デル・レイのラウンド・オブ16、マジョルカ対エスパニョール戦の31分だった。集中力を研ぎ澄ましたタケ・クボ(久保建英)がFKを蹴った。得意の左足から放たれたシュートは壁を乗り越えて、懸命に手を伸ばした相手GKディエゴ・ロペスの指をかすめてゴールネットに吸い込まれた。マジョルカが1-0と先制した瞬間だった。

 マジョルカは後半にもコーナーキックからアブドン・プラツのヘディングシュートで加点。相手の反撃を1点に抑え、10年ぶりにベスト8に駒を進めた。目下ラ・リーガで3連敗中と開幕以来、最大の難局に直面していたチームにとっては今後への弾みとなる1勝である。

 試合後、ルイス・ガルシア・プラサ監督はチーム内の祝勝ムードをうかがわせるエピソードを明らかにした。

「タケのガキンチョが、試合後、私を見るなり、『これでバーベキューを奢ってもらえるんだよね』って念を押してきた。直接フリーキックからゴールを決めて勝利できたならば、そうすると選手たちに約束していたからね。これで出費がかさむことになりそうだよ」

 ちなみにマジョルカには新入団選手は食事会を開催してチームメイト全員にごちそうするというしきたりが存在する。しかし、タケは自身が再加入であることを主張し、マノ―ロ・レイナらの圧力にもかかわらず、まるで乗り気ではない。この日、チームメイトはすっかりそんなことは忘れ、先制ゴールとバーベキューおごりをWゲットした大殊勲者をこぞって称えていた。

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 ルイス・ガルシア監督はタケも含めて現時点でのベストの布陣でこの一戦に臨んだ。その指揮官のメッセージを選手たちもしっかり受け取り、ここ数試合影を潜めていた勇敢さや大胆さを発揮。敵将のビセンテ・モレーノは、タケが前回在籍していた2シーズン前を含めて3年間、マジョルカを指揮した前監督という因縁も、選手たちのモチベーションを高める要因となっていたはずだ。

 無気力さが目についたエスパニョールに対し、マジョルカは局面に応じた理知的な振る舞いが光った。その流れの中で、生まれたのが冒頭で触れたペナルティーエリア手前、右寄りの位置からのタケの鮮やかな直接FK弾だった。

 前述したようにチームはこのところ負けが込んでいた。しかもこの1週間、選手間の不和が取り沙汰され、異なるコンペティションとはいえ、ここで負ければ重苦しい雰囲気がさらに悪化しかねない状況だった。そんな中での勝ち上がりであり、まさに白星は最高の良薬を実証した形になった。

 マジョルカの次戦は22日、エスタディオ・デ・ラ・セラミカに乗り込みビジャレアルと対戦する。タケにとっては昨シーズンの前半戦に在籍し、現在、マジョルカで見せている能力を十分に発揮できる機会を与えられなかった古巣だ。

 前半戦のホームでの試合は、0‐0のスコアレスドローに終わった。白星とゴラッソを弾みに上昇気流で因縁の相手との再戦を迎える。

文●エレナ・ガルシア(ディアリオ・デ・マジョルカ紙マジョルカ番)
翻訳●下村正幸

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