【FC東京】「サッカーよりも重要なのが…」。アルベル監督が示す〝チームマネジメントの本質“

2022年01月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

もっとも難しい仕事はプレーしている選手の扱いではなく…

2022年シーズンからFC東京を率いるアルベル監督。スペクタクルなサッカーで勝利を掴めるか。写真提供:FC東京

 東京ガスに代わりクラブ経営権を取得した大手IT企業『ミクシィ』の下、新たな一歩を踏み出すFC東京のシンボルのひとつになりそうなのが、アルベル・プッチ・オルトネダ監督だ。FCバルセロナで下部組織のコーチやアカデミーダイレクターを務めた経歴からも分かるように、標榜するのはポゼッションサッカー。そのスタイルでFC東京を魅力的で注目に値するチームに育て上げることが、同監督に課せられた使命となる。

 とはいえ、アルベル監督は「試合に必ず勝つ、タイトルを獲ることは保証できません」という。自らの哲学をチームに落とし込むうえで「最初の6か月は苦しむ時間が続くでしょう」と冷静に語る。1年目で土台を築き、2年目は良いスタートを切る、そして3年目はより良いパフォーマンスを披露する、それが指揮官のプランだ。

 アルベル監督曰く、チームを作る過程でもっとも重要なのは「一致団結」。「35歳だろうが、16歳だろうが、ピッチに立てば同じです。私が求めるスタイルにはコンビネーション、人間同士の絆が必要です」と主張していたが、ここでひとつの疑問が浮かぶ。

 そう簡単に一致団結なんてできるものだろうか、と。だから、新体制発表後のオンライン会見で、アルベル監督に直撃。「試合に起用される選手、使われない選手の間でモチベーションの差が出てきます。それを踏まえてチームを一致団結させるには何が重要になりますか?」と質問すると、実に興味深い答が返ってきた。
 
「ペップ・グアルディオラ監督が記者会見で何度も発している言葉が的を射ていると思います。それは『監督としてもっとも難しい仕事は、プレーしている選手の扱いではなく、プレー機会に恵まれない選手を含めたチームマネジメント』というコメントです。

プレー時間に恵まれている、恵まれていない選手の差が出てくるのを踏まえたうえでやらなければいけないのはまさしく私が新潟で2年間やってきたことだと思います。どの選手にも、誠実に、本音で直接コミュニケーションを取る。それが結果的に人と人とをつないでくれます。

サッカー以上に重要なのが一人ひとりの人生です。どんな会社でもそれは同じでしょう。我々はロボットではなく生身の人間です。そして一人ひとりの人生を大切にしなければ、良い関係性は築けません」

 サッカーよりも一人ひとりの人生。核心を突く考え方である。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
 
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