【鹿島】常勝軍団の復活を託された石井新監督 クラブ史上二人目の日本人指揮官がテーマに掲げたもの

2015年07月23日 サッカーダイジェスト編集部

当然ながら「カリスマ性」はまだないが…。

今季コーチとして14年目を迎えていた石井正忠新監督が、鹿島で二人目の日本人指揮官に。第2ステージ4節のFC東京戦が初陣となる。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 鹿島は7月21日付でトニーニョ・セレーゾ監督を解任、石井正忠コーチを内部昇格させ、新監督に任命した。クラブ史上2度目のシーズン途中での監督解任。緊張感の溢れるクラブハウスで、石井新監督がまず口にしたのが、クラブのアイデンティティーを取り戻させることだった。
 
「勝利にこだわって戦うチームを復活させたい。勝負強さ、勝負にこだわる姿勢を見せたい。セレーゾ監督の戦術を引き継ぎながら、セットプレーの守備など改善していきたい」
 
 ここ数年、クラブは世代交代を進めてきた。リーグ3連覇を支えた新井場徹、岩政大樹らが移籍。柴崎岳、昌子源、土居聖真らプラチナ世代を積極的に起用することをジョルジーニョ、セレーゾ監督に求めてきた。若手はポジションを得て、試合に出ることで力をつけたのは間違いない。ただ、クラブの伝統をも受け継ぐことができたのか、といえばそうではなかった。
 
 特に、セレーゾ監督は選手に制約を与えることで、チームをまとめようとした。中盤の独特な発想力は、制約によって、機械化されてしまった。その影響か、試合中のひとつのミスで自信を失い、ボールを受けたがらない選手もいたといい、勝ちきれないひとつの要因にもなっていた、と分析する選手もいる。
 
 石井新監督は前身の住友金属を含め、選手時代から長年鹿島に在籍してきた。監督経験こそないが、選手、スタッフとして数々のタイトルをもたらした歴代監督のノウハウを、目の当たりにしてきた。その経験から今、チームに足りないものを「勝者のメンタリティ」と導き、最大のテーマに据えたのだった。
 
 これまで、フロントは監督を「カリスマ性」を重要ポイントに選んできた。日本代表でも実績のある選手が多く在籍するため、監督が発する言葉に説得力がなければいけなかったからだ。
 
 当然ながら、石井新監督には、監督としてのカリスマ性はまだない。ただ、代わりにコーチとして選手から相談を受けるなど、これまでに培ってきた厚い信頼関係という強みがある。大物監督とはまた違った形で、選手に「監督のために」と思わせることができる存在だ。
 
 シーズン途中ということもあり、新体制後もこれまで通り4-2-3-1を継続させていく可能性が高い。監督就任2日目の練習では、ここ2年、先発から遠ざかっている本山雅志を主力組のトップ下に入れるなど、自分の「色」を出しながら、初陣となるFC東京戦へ向けた準備を進めている。
 
 クラブ史上二人目の日本人監督。「いつか、クラブで育てた日本人指導者にクラブを任せたい」(鈴木満常務)という目標は、望まない形で巡ってきた。常勝クラブ復活は、最も鹿島を知り、鹿島に尽力してきたうちのひとり、石井新監督に託された。
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