セオリーに囚われないことが、采配の妙を生み出す
R・ソシエダの主軸を担うメリーノ(左)とオジャルサバル(右)。ともに東京五輪で日本を破ったスペインのメンバーだ。(C)Getty Images
スペイン、ラ・リーガの古豪レアル・ソシエダが4‐3‐3を攻撃的に運用し、成果を上げている。どんな相手でもボールを握り、能動的なプレーを目指し、今シーズンも上位につける。
「FCバルセロナやマンチェスター・シティのように経済的に飛び抜けていなくても、実現可能な戦い方」
その証左だろう。
森保ジャパンが最近採用しているシステムで、こちらは見通しが厳しい。クラブチームと代表は、日々のトレーニングの点も含め、あらゆる面で異なる。とは言え、その成功は一つのヒントになるはずだ。
R・ソシエダの選手たちは、一人一人がボールを持って、回し、運ぶプレーを鍛えられている。スカウティングの時点で、そうした選手しか門をくぐれない。下部組織も充実し、同じ絵を描いてプレーできる選手を集めているのは特徴と言えるだろう。
【動画】サウジファンの行為に激怒し、客席に詰め寄る吉田麻也
「FCバルセロナやマンチェスター・シティのように経済的に飛び抜けていなくても、実現可能な戦い方」
その証左だろう。
森保ジャパンが最近採用しているシステムで、こちらは見通しが厳しい。クラブチームと代表は、日々のトレーニングの点も含め、あらゆる面で異なる。とは言え、その成功は一つのヒントになるはずだ。
R・ソシエダの選手たちは、一人一人がボールを持って、回し、運ぶプレーを鍛えられている。スカウティングの時点で、そうした選手しか門をくぐれない。下部組織も充実し、同じ絵を描いてプレーできる選手を集めているのは特徴と言えるだろう。
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特筆すべきは、左利きの選手が多い点である。
例えばヨーロッパリーグ、アウェーでのASモナコ戦では、左サイドバックのアイエン・ムニョス、インサイドハーフのダビド・シルバ、ミケル・メリーノ、右アタッカーのアドナン・ヤヌザイ、左アタッカーのミケル・オジャルサバルと、なんと先発5人がレフティだった。
単純な話、ボールをつなげるにはスペースを広く使って、相手を動かすことが基本になる。そこで、左サイドバックは左利きが定石となっている(けが人などが出ない限り)。また、右サイドにボールを出すには、左利きの選手がいると都合が良い。身体を開く動きを入れなくても右に出せるだけに、ボールが回る方向が左方向に偏らず、右方向にも回り、複合的な渦を作り出せるのだ。
また、左利き選手のアイデアやリズムは、右利きの選手とずれ、そのずれこそが意外性を与える。わずかなテンポの違いが、守備を崩すのであって、右サイドには左利きアタッカーを用いるのがセオリーだろう。脇を抉るようにゴールに向かってプレーし、相手を脅かす。バルサ時代のリオネル・メッシ、リバプールのモハメド・サラー、マンチェスター・シティのリャド・マハレズは代表格になるだろう。
日本代表では、久保建英、堂安律に相当するのだろうか。
もっとも、R・ソシエダはパワー、スピードを重視した攻撃に切り替える時には、右サイドにはポルトゥというゴリゴリの右利きアタッカーを入れる。左利きアタッカーは一つの選択肢と言える。セオリーに囚われないことが、采配の妙を生み出す。
一つ言えるのは、4‐3‐3で同じように戦い、同じように機能しないのでは、いくら勝っても、その先の道は断たれているということだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
例えばヨーロッパリーグ、アウェーでのASモナコ戦では、左サイドバックのアイエン・ムニョス、インサイドハーフのダビド・シルバ、ミケル・メリーノ、右アタッカーのアドナン・ヤヌザイ、左アタッカーのミケル・オジャルサバルと、なんと先発5人がレフティだった。
単純な話、ボールをつなげるにはスペースを広く使って、相手を動かすことが基本になる。そこで、左サイドバックは左利きが定石となっている(けが人などが出ない限り)。また、右サイドにボールを出すには、左利きの選手がいると都合が良い。身体を開く動きを入れなくても右に出せるだけに、ボールが回る方向が左方向に偏らず、右方向にも回り、複合的な渦を作り出せるのだ。
また、左利き選手のアイデアやリズムは、右利きの選手とずれ、そのずれこそが意外性を与える。わずかなテンポの違いが、守備を崩すのであって、右サイドには左利きアタッカーを用いるのがセオリーだろう。脇を抉るようにゴールに向かってプレーし、相手を脅かす。バルサ時代のリオネル・メッシ、リバプールのモハメド・サラー、マンチェスター・シティのリャド・マハレズは代表格になるだろう。
日本代表では、久保建英、堂安律に相当するのだろうか。
もっとも、R・ソシエダはパワー、スピードを重視した攻撃に切り替える時には、右サイドにはポルトゥというゴリゴリの右利きアタッカーを入れる。左利きアタッカーは一つの選択肢と言える。セオリーに囚われないことが、采配の妙を生み出す。
一つ言えるのは、4‐3‐3で同じように戦い、同じように機能しないのでは、いくら勝っても、その先の道は断たれているということだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。