【FC東京】新潟戦で2アシスト。“クロッサー太田”の誕生秘話

2015年07月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「合わせる」というより、今は「合わせてくれ」という感覚。

ホームの新潟戦でも見事なチャンスメイクで2得点に絡んだ太田。今季のJ1でのアシスト数をどこまで伸ばすか注目だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 第2ステージ・2節の新潟戦では9分にグラウンダーのクロスから東の先制弾を、終盤の78分にはセットプレーから森重のゴールをお膳立て。"伝家の宝刀"である左足のキックで2得点を演出した太田は、これで今季J1でのアシスト数を早くもふた桁の「10」(サッカーダイジェスト調べ)に乗せている。
 
 昨季の10アシストがキャリアハイだったので、記録更新は時間の問題だ。それにしても、太田が左足のクロスにこだわるようになったのはいつなのだろうか。

 彼の親友のひとりに言わせれば、高校3年の時。麻布大渕野辺高(現・麻布大高)でサッカーに明け暮れていた頃、国体に参加したのが大きなきっかけだった。
 
 その親友は言う。

「国体から帰ってくると、(サッカーに取り組む)意識が一段と高くなっていて。パスやセンタリングが速くなっていたんです。国体でJリーグのユース組とも一緒にプレーして、危機感を覚えたのかもしれません。『こんなんじゃ通用しない』と言って、クロスをバンバン上げていましたからね(笑)」
 
 それまでの太田はクロッサーのイメージがなく、どちらかと言えば足が速い、フィジカルで押し切るタイプだったそうだ。

 しかし、国体参加というひとつのターニングポイントを経てプレースタイルに変化が出始めた。そんな太田が容赦なく蹴り込む弾丸クロスに、当時高校のチームメイトだった小林悠(現・川崎)も「マジ、痛えよ」と怒っていた。
 
 クロスという武器を身に付けた太田は、その武器を頼りに日本代表にまで登り詰めたと言っても過言ではない。「コウちゃん(太田の愛称)は本当に良いクロスを上げてくれるので」と東が言うように、独特の"巻くクロス"は仲間の信頼を掴むうえでも大切な役割を果たしている。
 
 太田は昨季にインタビューした際、力強くこう言った。「僕が合わせるというより、今は俺のクロスに合わせてくれよという気持ちが強いです」。その揺るぎない自信が今季の10アシストにつながっているのだろう。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
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