“浦和の漢”を手ぶらで送り出すわけにはいかない――全員が戦闘態勢に。「残り1発」は天皇杯優勝に照準

2021年12月11日 牧野真治

「気を引き締め直そう」切り出したのは阿部だった

12日には天皇杯の決勝進出をかけ、準決勝でC大阪と対戦する浦和。宇賀神(左)、阿部(中)、槙野(右)ら歴戦の戦士たちとともに戦える最後のピッチでタイトル奪取なるか。(C)SOCCER DIGEST

 まるでスナイパーの口ぶりだった。

 天皇杯準決勝のC大阪戦を12日に控え、就任1年目も最終盤を迎えた浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督は言った。

「2つの大会で可能性はなくなったが、我々のライフルには残り一発の銃弾が装塡(そうてん)されている。最後の一撃で天皇杯の目標を仕留めたい」

 リーグ戦でのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得はならなかった。ルヴァンカップも4強止まり。だが浦和のサッカーを昨季までとまるで違ったスタイルに変え、J1優秀監督賞を受賞した指揮官の目はまだ野心に満ちていた。

「残り1発」。これが今季の浦和にとってはとてつもなく重要かつ来季の命運を握る。天皇杯は負けたら最後のノックアウト方式。シーズン終了となる。レッズの一時代を築き、今季限りで現役を引退するMF阿部勇樹、契約満了で退団するDF槙野智章、DF宇賀神友弥らとともに戦う最後のピッチだ。

 レッズの選手、スタッフが口を揃えるのが「阿部ちゃんにカップを掲げさせたい!」。07年、17年と2度のACL制覇など輝かしい功績を残した「浦和の漢」を手ぶらで送り出すわけにはいかない。

 先月27日の清水戦。ホーム最終戦にもかかわらず、0-1の敗戦を喫した。圧倒的にボールを支配するも残留争いの渦中にある相手を崩せない。弱点を突く一撃、ゴールに迫るプレーに欠け、失望させられた。
 
 その後、選手間では「もう1度、気を引き締め直そう」と話し合った。切り出したのが、これまで何度もチームの危機を救って来た阿部だった。MF明本考浩は「奮い立たされました」と話す。時を同じくして鼠径(そけい)部に負傷を抱えていたFWキャスパー・ユンカーらも練習に復帰した。

 現在、別メニューはゼロ。全員が戦闘態勢に入った。4日の名古屋戦も0-0に終わったが、内容は見違えた。ボールの運び、選手の距離間、闘う姿勢、どれも天皇杯に期待を抱かせるものだった。

 天皇杯で優勝すれば、言うまでもなくACL切符も手中にする。ACLのないシーズンはやはり味気ない。特にアジア制覇の美味を知る浦和は選手もファン、サポーターもACLに燃える傾向が強い。

 07年、城南との準決勝で足を引きずりながらも決めた阿部のPK。17年は槙野が上海上港のフッキらを無双した。17年の決勝前、壮大なビジュアルに試合前から涙をこぼしていたのは宇賀神だった。目を閉じれば昨日のことのように思い出される名シーンがある。
 

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