ミラン新監督ミハイロビッチの実力診断 3つの側面から考察する

2015年07月13日 ロベルト・ロッシ

攻撃の最終局面は個人能力に依存する部分が大きい。

今シーズンからミランを率いるミハイロビッチはどんな監督なのか。3つの側面から指揮官としての実力を診断した。 (C) Alberto LINGRIA

 ミランの新監督シニシャ・ミハイロビッチは、セルビア代表やラツィオ、インテルなどで活躍した選手時代から、歯に衣着せぬ言動で物議を醸してきた強烈なパーソナリティーと個性、そしてカリスマ性の持ち主。監督としてもそうした要素を武器にチームを統率する。
 
 すでにフィオレンティーナ、サンプドリアという中堅クラブを経験し、過去2シーズン率いたサンプドリアでは高い評価に値する結果も残しており、ビッグクラブを指揮する準備はできている。
 
【戦術・采配】
 チームの戦力や中心選手の個性に合わせて戦術を組み立てるリアリスティックなタイプ。これまで率いたチームでは、主導権にはこだわらず、まず守備を安定させる堅守速攻型のスタイルを志向してきた。
 
 与えられた戦力がそうした戦術仕様という側面もあるが、縦に速くフィニッシュまで手数をかけない攻撃を好む傾向を持っているのは事実だ。
 
 守備では組織を重視する一方、攻撃の最終局面は個人能力に依存する部分が大きく、その点ではマンチーニ(インテル)やモウリーニョ(チェルシー)に近いタイプと言える。
 
【チームマネジメント】
 これまで率いたチームは常に戦術的な秩序を備えており、統率が取れていた。自らのアイデアをチームに受け入れさせ、浸透させる手腕を備えている証拠だ。
 
 ただ、チームマネジメントの手法は説得・対話型というよりは服従・強制型で、歯向かう選手は切り捨てを辞さない。サンプドリアでは、今年1月の冬の移籍マーケットで、フェレーロ会長が独断で獲得したエトーと一時的に対立するも、最終的には支配下に置いてコントロールした。
 
 クラブの支持やサポートがない状況でも、自らの力でチームを掌握するだけの度量とカリスマ性を示すエピソードだろう。
 
【コミュニケーション】
 選手時代からその堂々とした態度、歯に衣着せない言動でマスコミから一目置かれる存在で、それは監督となった今もまったく変わらない。
 
 言動はお世辞にも洗練されているとは言えないが、遠慮なく核心を突くストレートな物言い、反論や少数意見にも聞く耳を持つ筋の通った姿勢は、マスコミからもサポーターからもおおむね好感を持たれている。
 
 また、インテル助監督時代に師事したマンチーニから学んだのか、自らの手腕や功績を巧妙にアピールするしたたかさも備えている。
 
診断:ロベルト・ロッシ
取材・構成:片野道郎
(ワールドサッカーダイジェスト2015.6.18号より加筆修正)
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