【湘南】湘南とFC東京で活躍した伝説の闘将ジャーンが認めた、永木の球際の強さとタフさ

2015年07月12日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

代理人として来日中。多くのサポーターと旧交を温める。

大槻(19番)と高山(右端)の2ゴールで名古屋を一蹴。古巣の勝利に、ジャーンも「よっしゃ!」とガッツポーズを作った。(C)J.LEAGUE PHOTOS

「すいません、ここ空いていますか?」
 
「ええ、どうぞ」と顔を上げると、そこにいたのはジャーンだった。とても自然な日本語だったこともあり、面食らった。湘南とFC東京で魂の守備を体現し続けたブラジル人DFが、ワイシャツ姿でBMWスタジアムに訪れていた。

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 02年から06年まで在籍したFC東京では、茂庭(現・C大阪)とCBコンビを組んでチームの安定した土台を築き、04年には ナビスコカップ決勝で語り草となる"ジャーンの涙"で、クラブ初タイトルをもたらした。
 
 そして湘南では、07年から10年までプレー。低迷していたチームを上昇の軌道に乗せ、J1復帰に導いた。
 
 対峙する相手が強ければ強いほど気迫を漲らせて封じ込めたファイターは、両チームの多くのサポーターから愛されたものの、静かに日本を去り、現役を退いていた。
 
 現在は代理人として来日中で、J2を含め全国各地を巡っているという。なにより驚かされるのが、その流暢な日本語。9年間Jリーグでプレーする間、勤勉だったジャーンは言葉を覚えて日本の文化をも吸収し、声でもチームを最後尾から引き締め、そして日本での生活をより充実したものにした。
 
 その日本語が今、非常に役立っているという。湘南の助っ人FW補強もあるのだろうか?と振ってみると、「いやあ、ちょっと分からないっす」と丁寧にかわされた。
 
 ちなみに「俺は」「っすね」と言う時のアクセントが、少し茂庭の影響を受けている気がした。
 
 7月11日の湘南-名古屋戦、そんな闘将ジャーンと、偶然にも記者席の隣同士で試合観戦する機会に恵まれたのだ。
 
「楢﨑さんは39歳なの? 凄いなあ(ジャーンは37歳)」
 
「大槻のプレーは速くて正確」
 
「ベルマーレはリズムが良いっすね」
 
 ジャーンがなにより心地良く感じていたのが、この日のスタジアムの雰囲気だ。1万人を超え、ほぼ満員となったBMWスタジアムの一体感に包まれた盛り上がりに、こう笑顔で呟いた。
 
「本当に嬉しいよ」
 
 湘南の低迷期を知る男のひと言だけに重みがある。
 
 ハーフタイムには、ジャーンに気付いたサポーターとの記念撮影に応じて旧交を温め、"同窓会"のような雰囲気に包まれた。
 
 試合は、湘南の特長があらゆる局面で発揮されて、逆に名古屋の悪いところばかりが目立つ展開となった。ホームチームが奪った大槻と高山の2ゴールは、様々な選手の技術、運動量、阿吽の呼吸が高い次元で噛み合って生まれたものだった。
 
 終盤、名古屋のパワープレーは容赦なかった。今季の湘南の時間帯別失点を見ると、「75分から試合終了」までに与えた点が25点中10点と実に4割を数える。
 
 そういったデータを踏まえての、名古屋の総攻撃でもあった。

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