香川真司 新監督が絶賛のパフォーマンスも、待ち受けるのは熾烈な定位置争い

2015年07月08日 遠藤孝輔

精力的なプレスも効果的で、組織の歯車としてしっかり機能。

2ゴールという目に見える結果を残した香川。トゥヘル新監督も「パーフェクト」とそのプレーぶりを称えたが、言うまでもなく勝負はこれからだ。 (C) SOCCER DIGEST

 七夕の夜空を分厚く覆った曇天を吹き飛ばすような会心のパフォーマンスを見せ、ドルトムントが川崎フロンターレに6-0の大勝を収めた。
 
 このフレンドリーマッチで鮮烈な活躍を披露したのは、試合前日にチームに合流したばかりの香川真司だった。
 
 4-2-3-1が基本だったクロップ前監督時代とは異なる4-3-3(4-1-4-1)システムの左インサイドハーフとしてスタメンに名を連ねると、開始5分に頭で合わせて先制点を奪い、36分には右足で追加点と目に見える結果を残し、等々力競技場に詰め寄せたドルトムント・ファンを魅了してみせた。
 
 卓越していたのはフィニッシュだけではない。「ポゼッションを大事にしよう」というトーマス・トゥヘル新監督からの指示に忠実に従い、中盤のスペースにうまく入り込んでは(あるいはボランチの位置まで下がって)後方からのボールを引き出し、小気味良いパスを幾度となく味方に通していた。
 
 本人は試合後に「うまくハマらない時もあった」と振り返っていたが、最前線や中盤での精力的なプレスも効果的だった。決して独りよがりにボールを追い回すのではなく、周囲の味方との距離を確認しながら敵を追い込み、何度かボール奪取からのショートカウンターに結び付けていた。
 
 新戦力やレンタルバックの選手が多く、共通理解が進んでいるとは言い難いチームの中で、しっかり組織の歯車として機能していた印象だ。
 
 実際、トゥヘル新監督は香川が退いたハーフタイムの時点で「2ゴールを奪った真司のプレー内容はパーフェクトだった」と絶賛。試合後も「素晴らしい技術を持った選手だし、(これから)チームの助けになってくれるはずだ」と賛辞を惜しまなかった。
 
 もちろん、このプレシーズンマッチだけでレギュラーが保証されたと見なすのは尚早だ。4-2-3-1システムのトップ下として後半のピッチに立ち、3ゴールに絡む好プレーを見せたヘンリク・ムヒタリアンをはじめ、ポジションを争うライバルが少なくないからだ。
 
 この試合はCFでの可能性を試されたエースのマルコ・ロイスや、退団濃厚から一転して新契約にサインしたイルカイ・ギュンドアンが今後、トップ下やインサイドハーフで試されるケースもあるはずだ。待ち受けているのは熾烈な定位置争いだ。
 
 それは百も承知なのだろう。香川は試合後の囲み取材で、笑顔ひとつ見せずに、
「これから厳しい環境、戦いが待っている。ヨーロッパリーグの予選(7月30日)があるし、時間は限られている。しっかり追い込みながらキャンプをこなしていきたい」
 と引き締まった表情を浮かべていた。
 
 いずれにしても、背番号を7番から前回所属時の23番に戻した復帰2年目のシーズンは始まったばかり。勝負はこれからだ。
 
取材・文:遠藤孝輔
 
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