【セルジオ越後の天国と地獄】強化には環境の整備が不可欠。協会は、なでしこの活躍に報いる仕事をすべきだ

2015年07月06日 サッカーダイジェスト編集部

大会の時だけ顔を出すのでは、選手たちがかわいそうだよ。

第二の澤を育てるためにも、女子サッカーのさらなる環境整備は急務だ。 (C)Getty Images

 なでしこジャパンは残念だったね。ワールドカップ連覇を狙って決勝まで辿りついたけど、アメリカに力の差を見せ付けられてしまった。
 
 悔やまれるのは、立ち上がりの出来だね。押し込んで圧倒してやろうというアメリカの意気込みに飲まれて、3分にセットプレーから失点してしまった。先制されたのは今大会初だったから、ダメージが大きかったのだろう。
 
 動揺が収まらないうちに、5分にもセットプレーから失点し、さらに14分、16分と4点を奪われた。最終的なスコアは2-5。言い訳のできない大敗だったね。
 
 厳しいことを言うようだけど、この結果では評価できないよ。もちろん、彼女たちの健闘は称えたいし、2大会連続でのファイナル進出は悪くない成績だけど、今回はディフェンディングチャンピオンとして挑んだ大会だ。連覇以外はすべて同じ。それがチャンピオンの宿命なんだ。
 
 ただ、今のなでしこジャパンの実力を考えれば、準優勝は妥当なのかもしれない。前回のドイツ大会は、粘り強く耐えてPK戦に持ち込んだ末の優勝で、総合的なチーム力はアメリカのほうが上だった。今回は、力の差がきっちりとスコアに反映されてしまったんだ。
 
 なでしこジャパンにとって、この敗戦は節目になるかもしれないね。
 
 佐々木監督が時間をかけて作り上げたチームは、4年前のドイツ・ワールドカップを制し、3年前のロンドン五輪で銀メダルを獲得した。次々と結果を残したことで注目度が上がり、いつしか「勝たなければいけない」という過度なプレッシャーを感じていたのではないかと思う。だから、今大会でも計算できる不動のメンバーを使って結果を求めた。その影響で、世代交代が進まなかったというマイナス面があるんだ。
 
 おそらく、これから何人かの選手が代表を去るだろうし、監督が変わるかもしれない。いずれにせよ、来年のオリンピックや4年後のワールドカップを目指して、もう一度チームを作り直すスタートになるはずだよ。
 
 でも、ここから上を目指すなら、協会のサポートが不可欠になるだろうね。今大会のメンバーを見ても分かるように、澤や宮間たちに取って代わるような存在は出てきていない。本来は、協会が主導してそうした選手を育てるべきだけど、日本はアメリカなどの強豪国と比べて、女子サッカーを取り巻く環境が整備されていないんだ。
 
 なでしこリーグのなかには、アルバイトで生計を立てている選手もいるし、育成年代の選手たちがプレーする場所も限られている。こうした環境を改善しない限り、女子サッカーの総合力は上がらないだろう。
 
 協会は、なでしこジャパンに今以上の予算を付けるなり、いろんな選手がプレーできる環境を整備するなり、本腰を入れて女子サッカーの強化に乗り出すべきだね。今までのように、大会の時だけ顔を出してフィーバーを眺めているだけでは、選手たちがかわいそうだよ。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事