【女子W杯】いまや国民的関心事――なでしこ撃破に牙を研ぐイングランド女子「ライオネス」の熱狂|ロンドンから緊急レポート

2015年06月30日 スティーブ・マッケンジー

ライオネスの持ち味は「ファンタスティックな23人」の結束力。

準々決勝で開催国カナダを破り波に乗るイングランド、通称「ライオネス」。その快進撃はいまや国民的関心事だという。 (C) Getty Images

 イングランドはいま、女子ワールドカップに夢中だ。準決勝に進出したイングランド女子代表、通称「ライオネス(雌ライオン)」の快進撃に熱狂している。
 
 イングランドのサッカーファンは、ずっと胸のすくようなサクセスストーリーに飢えていたんだ。なにしろ、男子が不甲斐なかったから。
 
 ご存じのとおり、スリーライオンズ(イングランド代表の愛称)は昨年のブラジル・ワールドカップでグループリーグ敗退に終わった。ひとつも勝てない惨敗(1分け2敗)だった。先のU-21欧州選手権でも、イングランドはグループリーグで敗れ去った。
 
 だから、カナダで華々しい活躍を演じているライオネスに心を躍らせているんだ。
 
 いまやファンの関心、メディアの注目は、6月29日に開幕したウインブルドンに勝るとも劣らないくらい。まさに国民的関心事と言っても過言じゃない。
 
 開催国カナダを破った準々決勝のTV中継を生で観た視聴者数は、およそ160万人。英国時間真夜中過ぎのキックオフでこの数字は、ちょっと考えられない水準だ。
 
 セレブたちもライオネスに魅了されてしまっているよ。ウィリアム王子も夜更けのカナダ戦に熱狂したひとりで、ウェイン・ルーニーやエマ・ワトソン(映画ハリー・ポッターシリーズでお馴染みの女優)なんかもファンを公言しているよね。
 
 決勝進出を懸けて戦う相手は、そう日本だ。言わずと知れた前回王者で、強敵に違いないけど、ライオネスにも勝つチャンスはあるはずだ。選手たちも、メディアなんかには謙虚に語っているけど、目の輝きは自信に満ちているよ。
 
 テクニカルな日本のパスサッカーを封じる術を、マーク・サンプソン監督は用意しているようだ。
 
 ライオネスの持ち味は、一枚岩にまとまったチームの結束力。傑出したスターはいないけど、キャプテンのステフ・ヒュートンを筆頭に「ファンタスティックな23人」が揃っている。
 
 日本の皆さんには申し訳ないけど、勢いで言ったらライオネスに分があるんじゃないかな。開催国を叩いた準々決勝の勝利が、チームに大きな自信を与えたんだ。日本だって、前回大会は開催国のドイツを同じく準々決勝で破り、頂点まで駆け上がったよね。今回はイングランドがその再現をしても、まったく不思議じゃないよね。
 
 たしかに、こっちのブックメーカーはほとんどが日本有利のオッズを立てている。下手な解説者より彼らの予想はよっぽど当たるけど、でも、今回ばかりはどうだろう。ライオネスの勢いが、日本を飲みこむんじゃないだろうか。
 
文:スティーブ・マッケンジー Steve MACKENZIE
 
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースに所属した経験を持つ元選手。サッカー奨学生として米国の大学でプレーし、1989年にはNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。古巣のウェストハムをこよなく愛し、自身のルーツでもあるスコットランド代表も熱くサポートする。サッカーダイジェスト誌、ワールドサッカーダイジェスト誌などを発行する日本スポーツ企画出版社の欧州チーフコレスポンデントで、ロンドンを拠点に活動している。
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