【甲府】佐久間監督の下で負けない甲府。ここぞで見せた「反発力」は本物か?

2015年06月28日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

反発力の裏に見える、横浜戦での成功体験。

堀米と阿部拓のコンビで同点ゴールを奪取。「同点にできる」(堀米)というムードが沸いたのも、横浜戦での戦いぶりが少なからず影響していたのかもしれない。写真:J.LEAGUE PHOTOS

 ホームの山梨中銀スタジアムには、嫌な空気が漂いかけていた。
 
 63分、自陣でパスを回され、エドゥアルド→武富と経由したボールがクリスティアーノに渡った瞬間、一瞬の間が空く。右足を強振されると、シュートは一直線にサイドネットに突き刺さった。
 
 やや受け身になったうえ、相手への寄せが甘かったのは否めない。堅守をベースに速攻からワンチャンスを活かそうと目論んでいた甲府にとって、この失点が精神的に小さくないダメージを与えたのは間違いないだろう。
 
 だが、ここでめげないのが今の甲府である。樋口前体制下では、先制点を与えると勝利はおろか、同点に追いつくのも厳しかったが、「追いつけそうな雰囲気」(堀米)が生まれていく。
 
 それは佐久間監督が瞬時に見せた、積極的な采配によるところが大きい。失点直後の65分に堀米、松本、77分に盛田を投入し前線の枚数を増やすと、「相手が守備時に4-1-4-1の布陣になるので、1ボランチの両脇をどうにか攻略したかった」(佐久間監督)との狙いは見事に奏功した。
 
 変則的な4-2-2-2へシフトし、ボランチの脇で堀米が何度もボールを引き出して攻撃のリズムを創出。迎えた84分、堀米のパスをペナルティエリア左で受けた阿部拓が、巧みにDFを振り切って絶妙なコースにシュートを撃ちこんだ。
 
 佐久間監督の就任後、先制されながら追いつく展開は、実はこれが初めてではない。
 
 15節の横浜戦でも、前半終了間際にオウンゴールで失点したが、後半にセットプレーから同点に持ち込んでいる。奇しくも、この時の交代カードの顔ぶれは柏戦と同じで、途中投入された堀米のアシストから阿部拓がゴールを奪ったところまで一緒だ。結果的に勝ち越せなかったが、"先制された場合は全敗"というこれまでの分の悪さを考えれば、勝点1獲得は御の字だったろう。
 
 横浜戦での成功体験があったからこそ、たとえ失点しても"反発力"を生み出せたと見られなくもない。いずれにせよ、失点直後に見せた指揮官の積極采配、それに対して「一丸となってチームのために忠誠心を持って戦った」(佐久間監督)選手の働きは評価できる。

次ページ収穫は決して少なくないが、攻守とも改めて課題が浮き彫りに。

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