これぞ熟練の技。遠藤保仁の“時空を操る”スルーパスは、痺れるほど絶妙なアシストだった【磐田】

2021年10月03日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「非常に良いボールだったと思います」

町田戦で先制点をアシストした遠藤。絶妙な浮き球のスルーパスだった。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

 遠藤保仁のワンプレーで、まるで時が止まったような感覚になったのは、いったいなぜだろうか。

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 2-1で勝利した町田戦、磐田は立ち上がりこそ攻め込まれたシーンもあったが、徐々にポゼッションで試合の主導権を握る。11分には、最終ラインに遠藤を加えた面々でゆったりとパスを回し、ゲームをグッと落ち着かせた。

 次第に山本康裕やシャドーもビルドアップに混ざり、大津祐樹から遠藤にボールが渡る。すると遠藤は突如、ダイレクトで浮き球のスルーパスを供給し、相手の最終ライン裏に走り込んだルキアンの先制ゴールをアシスト。この瞬間に筆者は時が止まった感覚になった。

 おそらく要因は"時空を操る"プレーだったからではないだろうか。ゆっくりとパスを回し続けていたなかで、遠藤はハーフウェイライン付近からダイレクトで一気にスピードアップする長いボールを送り、テンポ(=時)を変えた。さらに山なりの柔らかいパスで、高さ(=空)もコントロール。タイミングと視界をずらすボールは、痺れるほど絶妙だった。

 遠藤は冷静にアシストを振り返った。

「ボールをもらう時に、ルキアンとも意思統一できていましたし、裏にスペースがあるのは分かっていたので、タイミング良く出すことができたと思います。あとはダイレクトのタイミングでルキアンも動き出し始めていたので、非常に良いボールだったと思います」
 
 プロの世界になれば、優れたパサーはたくさんいる。例えば町田なら髙江麗央、G大阪ならチュ・セジョンや山本悠樹はパスが上手い。しかし時空を操れる選手は稀少で、遠藤だからこそ成せる熟練の技だと思う。唯一無二のレジェンドである理由が、改めて垣間見えたシーンだった。

 鈴木政一監督は遠藤のアシストについて「あぁ、もう、彼はそこらへんはしっかり見えている。一番の良いところです」と絶賛。思わずため息が漏れるような褒めっぷりにも、遠藤の凄みが如実に表われていた。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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