【中断明けの青写真|福岡】目下5連敗…次なるステージ到達への「新たな壁」。現状打破への切り札は?

2021年08月08日 中倉一志

「軸ぶれすることなく、しっかりと守備をして攻撃面で挑戦していきたい」

湘南から完全移籍で中村駿を獲得。攻守両面での働きが期待される。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 前半戦はリーグ戦6連勝を含む公式戦11戦無敗を記録し、その活躍が注目を集めた福岡も、17節の大分戦に敗れてからリーグ戦で5連敗と、一時の勢いをなくしている。攻守ともに100%のパワーでアグレッシブにプレーするスタイルを志向する福岡は、まずは守備の質と強度を高め、堅守をベースに少ないチャンスを確実にものにすることで勝点を重ねてきたが、直近の5試合での失点は9。戦いのベースが崩れてしまったことで苦しい戦いを強いられている。

 その要因は「強度のところが少し落ちている」(長谷部茂利監督)こと。高い位置からの連動したプレスと球際での強さがアビスパのストロングポイントだが、試合を重ねる中で対戦相手に研究されてきたことに加え、それぞれのチームの成熟度が上がってきたことにより、相対的にその部分での優位性を見いだせなくなっている。「自分たちの成長が追いついていない。そこを覆す、そこを越えるだけの成長が足りないし、成長しないと、それを抑えることができない」と話す。
 
 いわば、5連敗は福岡が次のステージに進むために現われた新たな壁。その壁を前に長谷部監督は次のように話す。
「福岡の現状の最大値を出せるのは、守備で100%の力を発揮しながら攻撃の100%を目指すこと。それが一番チームが勝点を取れる形だと信じて、ここまで突き進んできている。軸ぶれすることなく、しっかりと守備をして攻撃面で挑戦していきたい」

 そんな福岡にとって、オリンピックによる中断期間は格好の期間。新しい何かに挑戦するというよりも、自分たちが志向するスタイルをさらに成長させることで、再び上昇気流に乗ることを目指している。

 その中で注目されるのは、湘南から完全移籍で獲得した中村駿の存在だろう。長谷部監督が水戸を率いていた時からリストアップしていたという待望の戦力で、「ボールを動かすところ、また守備のところでも人と連動してボールを奪うこともできる。そこに期待している」とは長谷部監督。中村本人も「前線にはボールを収められる選手がたくさんいるので、そこと上手く関わりながら、ゴール前にどんどん顔を出していきたい」と意欲を口にする。攻守両面において、もう一つ上のステージへ上るための切り札としての期待がかかる。

 長谷部監督が就任以来、常に口にするのは「自分たちは何をしようとしているのか」「自分たちのやるべきことをやり切る」という言葉。その言葉を胸に、全員が一丸となって、昨年も、そして今年もチャレンジャーとして戦ってきた。その姿勢を結果につなげるべく、再開初戦の広島戦に向けて準備を続ける。

取材・文●中倉一志(フリーライター)

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