【浦和】武藤雄樹――真摯な姿勢に見えるブレイクの要因

2015年06月08日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「まだまだレジェンドの領域に入るな、ということだと思う」

武藤はスカウティングどおりに清水のSBの裏にできるスペースを鋭く突破。5試合連続得点こそならなかったが、自信を深めるパフォーマンスを披露した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 今オフ、武藤雄樹は4年間在籍した仙台を飛び出して、Jリーグ屈指の人気クラブに移籍してきた。前評判が決して高かったわけではない。しかし、着実に結果を残して指揮官の信頼を掴むと、ついにはチームのレジェンドたちに肩を並べるべく、第1ステージ15節・清水戦のピッチに立った。

【J1 PHOTOハイライト】浦和 1-0 清水
 
 リーグ戦5試合連続ゴール――。クラブ史上、この記録を達成しているのは1995年の福田正博氏、2004年のエメルソン(現・コリンチャンス)しかいない。結果として、1-0で勝利した試合で得点を奪えなかったものの、武藤は悔しさを滲ませるでもなく、第1ステージ優勝をほぼ手中に収めた勝利だけを素直に喜んだ。
 
「みんなで我慢強く戦って、しっかり勝点3を取れたので良かった。(第1ステージの)タイトルが懸かっているので、しっかりと獲りたい。アウェーでの神戸戦も鬼門と言われているみたいですけど、今の自分たちの強さを表現して優勝を決めたい」
 
 ミックスゾーンで多くの記者がコメントを求めて集まるなか、物怖じすることなく、質問者の顔をしっかりと見つめて、他の選手と同様の想いをハキハキと続ける。
 
「一番の目標は年間を通しての1位。ファーストステージの優勝は通過点だという気持ちでいる。そういう意味で、勝ち急がず、バランス良く戦えているんだと思う」
 
 返答に詰まらず、意図を理解して流暢に言葉を紡いでいく。決して受け流すことはなく、真摯に受け応える様は地頭の良さを感じさせ、特殊と言われる"ミシャ・スタイル"に素早くフィットできた理由を垣間見られた気すらした。
 
 途中、報道陣から当然のように「連続得点記録が途切れた」ことに対する質問が飛んだ。しかし心を乱す様子もなく、攻守で貢献を続けるアタッカーはユーモアを織り交ぜながら記者の問いに答えていく。
 
「もちろん、できることなら得点を取りたかったですけど……僕に『まだまだレジェンドの領域に入るな』ということだと思います(笑)。これからもっとチームに貢献して、同じように連続ゴールが決められるよう自分を成長させていきたい」
 
「相手の最終ラインが高いという情報は入っていたので、SBの裏を狙う、ショートカウンターでスペースに飛び出す、この点を意識していた。僕が得点を取りたいからといって真ん中にいてもしょうがないし、(サイドに流れてのプレーは)チームの勝利だけを考えていた結果です」
 
「今日みたいな厳しい試合で『自分がゴールして(チームを)勝たせたい』という気持ちもありますが、エースである(興梠)慎三さんが決めてくれる。さすがだな、と。自分もそういう選手になりたいと、改めて思いましたね」
 
 フォア・ザ・チームを念頭に置く青年は、純粋に浦和で戦うことを楽しめている。プレッシャーなど、どこ吹く風だ。「通過点」、「成長途中」――。その視線の先にはなにが見えているのか。"赤い悪魔"で主力の座を掴んだ武藤のプレーから、しばらく目が離せそうにない。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事