連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】優勝に王手の浦和 勝因は「無敵の3-2-5」

2015年06月08日 熊崎敬

完成度を増した独特のシステムとタレントの力。

6月20日の次節・神戸戦(アウェー)で勝点1を加えれば第1ステージ優勝が決まる浦和。勝因はどこに? (C) SOCCER DIGEST

 ホーム、埼スタでの清水戦(1-0)で開幕からの連続無敗を15試合に更新。浦和のステージ優勝が決定的になった。
 
 今季、新たに導入された2ステージ制では、シーズンの山場を増やすという効果が期待された。だが浦和の独走で、味気ない終盤戦になってしまった。
 
 浦和の勝因はふたつある。ひとつは完成度を増した独特のシステム、もうひとつはタレントの力だ。
 
 ペトロヴィッチ監督は就任4年目にして、浦和流ポゼッションスタイルの完成度を大きく高めることに成功した。マイボールのとき5人が前線に大きく広がり、押し包むようにして相手ゴールを攻略する3-2-5システムは無敵に近い。
 
 いままでの浦和は、前線の選択肢が多い3-2-5の長所を生かすよりも、後方の人数が少ないという短所から崩れることが多かった。だがいまは長所を生かし、短所を修正することができている。
 
 今季の浦和は、左右に中央とバランスのいい攻撃ができている。かつては宇賀神&槙野の左サイドに偏っていたが、今季は関根の台頭によって、関根&森脇の右サイドからも多くのチャンスが生まれた。左だけでなく、右も、さらに中央も怖い。こうなると敵は戸惑う。どれだけ集中しても、どこかに隙が生まれるものだ。
 
 また浦和といえば支配率は高いが、横パスが多く手詰まりになってしまうという課題があった。だが、それも改善された。右の関根、左シャドーの武藤という危険なドリブラーが加わったことで、縦への突破力を増したからだ。
 
 2015年の浦和は大きく幅を使いながら、縦に切り込むことができている。ワシントンやエメルソンといった際立ったストライカーがいない彼らが1試合2点以上(平均2.2得点)決めているのは、従来のシステムをより進化させたからだ。
 
 前述したように、彼らは逆襲に脆いという短所も修正した。それは前線からの守備がきっちりできているからだ。
 また従来は最終ラインでのミスを突かれてゴール前が混乱、そのまま失点することも多かったが、それも減った。それにはGK西川の存在が大きい。苦しくなったら彼に預ければいいのだ。そうすると敵にボールを与えずに済むだけでなく、絶妙なミドルパスから逆襲のチャンスが生まれる。
 
 このように難易度の高いシステムを浦和が巧みに運用できているのは、ふたつ目の理由として挙げたタレント力の存在を無視できない。日本代表のレギュラークラスはいないものの、すべてのポジションにJ1屈指のタレントがいる。組織でも個人でも優位に立っているのだから、浦和の優勝は当然の成り行きだろう。
 
 もっとも、いくら浦和が強いといっても、第2ステージも同じ流れになればリーグは白ける。自分たちのサッカーを貫くのではなく、まずは浦和のシステムを壊そうとする、そんなしたたかな戦いが対戦相手には望まれる。
 
取材・文:熊崎敬
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