【CL決勝プレビュー】ザッケローニ元日本代表監督の視点「ユーベがメッシとその仲間を止めるには――」

2015年06月03日 パオロ・フォルコリン

バルサの3トップは世界一だが、守備と中盤はユーベが上回る。

 6月6日、ドイツ・ベルリンで2014-15シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝が行なわれる。バルセロナとユベントスの対峙は、互いにビッグクラブの割には過去の対戦成績は多くなく、新鮮かつ興味深いカードと言える。
 
 戦前の予想では圧倒的な攻撃力を誇るバルサが有利とされているが、当然ながら堅守のユーベを侮ることはできない。
 
 さてここでは、元日本代表監督で、2010年にはユーベの監督を務めたアルベルト・ザッケローニに、この世界注視の一戦を占ってもらおう。カルチョはもちろん、欧州サッカーを知りつくす経験豊富な「ナビゲーター・ザック」の視点とは?
 
――◇――◇――
 
 私が思うに、ユーベがバルサを破る確率は50パーセント。あまり独創的な意見ではないかもしれないが、本当にどちらが勝ってもおかしくない。
 
 私は両方の準決勝を見たので、どちらの力もよく理解した上で予測ができると思う。
 
 まずはバルセロナから。言うまでもなく、彼らの一番の武器は攻撃力だ。リオネル・メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスからなるトップは強力で、世界中のどこを探してもこれほどの選手を揃えたチームはないだろう。だから、この3トップの力を完全に生かし切ることができれば、バルサは勝利に大いに近づくことになる。
 
 反対に彼らの弱点はバックスだ。ハビエル・マスチェラーノは守備陣をうまく指揮できる選手ではあるが、両SBのジョルディ・アルバとダニエウ・アウベスは、対峙するアルバロ・モラタやカルロス・テベスが決して抜くことのできない相手ではない。
 
 また両チームのGKを比較すると、これは間違いなくジャンルイジ・ブッフォンに軍配が上がるだろう。ブッフォンはワールドカップを始め、これまでほとんどのタイトルを手に入れてきたが、唯一CLだけが足りない。年齢から見ても、今回がそれを勝ち取れる最後のチャンスかもしれない。モチベーションは、いやがおうにも高まっているはずだ。
 
 モチベーションの高さについては、ユーベの選手全員に共通していることだろう。対するバルセロナは近年、何度も決勝を経験している。つまり、彼らにとってCL決勝とは、ごく"普通"のことなのだ。
 
 ところが、ユーベは違う。この決勝のチケットを手に入れるのに、彼らは12年も待ったのだ。まさに、一世一代の大舞台と言える。そしてこれこそが、彼らの大きな武器となると私は思う。
 
 もっとも、マッシミリアーノ・アッレグリは優秀な監督であり、物事を大げさにしない人物だから、ピッチに立つ選手たちに重圧を与えるようなことはないだろう。それに、一般的にはバルサの方が優勢と見られているから、守るものがないユーベの方がのびのびとプレーできるのではないだろうか。
 
 さて、視点をまたテクニカルな部分に戻そう。バルサのFWは優秀だが、ユーベも中盤には他のチームにはない最高レベルの選手を揃えている。アンドレア・ピルロ、ポール・ポグバ、クラウディオ・マルキージオ、アルトゥーロ・ビダル……。バルサの中盤はユーベほどはまとまっていないし、強くもない。
 
 ユーベの中盤は守備に強く(ピルロは例外とすべきかもしれないが)、同時にエリア外から様々なかたちでゴールを狙うこともできる(この場合は間違いなくピルロが先頭に立つ)。
 
 また、バルサの素晴らしいアタッカーたちは、後ろに戻って中盤に手を貸すことはあまりしない。ところが、テベスとモラタはゴール前での危険度を維持しながらも、中盤を助けることにも慣れている。
 
 もし決勝戦がホーム&アウェー方式であったなら、ユーベが優勝する可能性は30パーセントだったろう。しかし一発勝負の対決であれば、確率は五分五分である。
 
 重要なのは、立ち上がりだ。もし、ユーベがメッシとその仲間たちを止めたいのならば、最初の15分を制すること。そうすれば、かなり良い戦いになるはずだ。
 
 私が「スカパー」の解説者として観戦することになるこの一戦については、とにかくスペクタクルな戦いになることを願っている。

取材・文:パオロ・フォルコリン(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
翻訳:利根川晶子
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