【釜本邦茂】緩急のないワンパターンな攻撃、雑なフィニッシュ…このサッカーは世界で通用するのか?

2021年06月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

日本はスペシャリストを育てていく必要がある

タジキスタンを相手に4-1と勝利した日本だが、前半は攻めあぐねる時間帯も。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 タジキスタン戦は勝つには勝ったけど、なんだか忙しいサッカーだったね。パス、パス、パス、パス……。「え、そこもつなぐの?」って思った場面が何回あっただろう。しかも、ずっと同じようなリズムで繋ぐから、前半の途中は相手も慣れてきて、少し膠着状態になっていた。

 南野のゴールで前半のうちに勝ち越せたから良かったものの、後半もあのまま粘られていたら危なかったんじゃないか? A代表はもう少し緩急のリズムがあるサッカーをやるものだと思っていたけど、昨日のチームからはそういうものが感じられなかった。マイボールを大事にしようという意図は分かるが、もっとゴールに向かおうというプレーに繋がらなければボールを持つ意味がない。

 タジキスタン戦では、攻撃陣に相手の守備を崩すために仕掛けようという意欲があまり感じられなかった。後半に古橋が何度かドリブルでそういうシーンを作ったけど、まだまだ足りない。ロシア・ワールドカップの時の乾や、U-24代表に入っている久保のように、とにかく自分の間合いに入ったら、どんどん仕掛けるという選手がいないから、90分のほとんどがワンパターンな攻撃にしか見えなかった。

 日本はもっと個の勝負で打開できる人材が必要だよ。個の力で勝てないから組織というのは、アジアレベルではなんとか勝てるかもしれないが、結局世界レベルではある程度のところまで行くと通用していない。1対1の局面で勝てる選手がいなければ、タジキスタンのようにきっちり引いて守られたら、最終予選でも得点するのは難しくなる。
 
 そのうえフィニッシュも雑で、きっちり枠を捉えられていない。我々の頃は練習用の壁に番号を狙ってひたすらシュートを打ったり、ヘディングの時に最高打点で捉えられるようにペンデルボールっていうのを使って何度も練習したものだけど、今の人はそういうのをやらないんだろうね。小さな頃から足下の技術やグループ戦術を叩き込まれて、ボール回しや組織的にプレーするのが上手くなっているのは分かるけど、やっぱりゴール前の力強さというのは1対1で勝負できるドリブラーと同じように、スペシャリストにならなければ生み出せないものだ。

日本人はなんでも器用にこなすのが特徴だけど、世界で勝つためにはもう少しスペシャリストを育てていく必要があるんじゃないのかな。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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