【連載】識者同士のリーガ放談「バルサ優勝を語り尽くす」

2015年05月22日 豊福晋

“バルサらしくない”スアレスが生んだポジティブな化学反応。

相乗効果が絶大だったスアレス(左)の加入。トリデンテの破壊力がバルサを優勝へと導いた。 (C) REUTERS/AFLO

豊福晋:バルサのリーガ優勝が決まりました。今回はもちろんこの話題です。
 
ルイス・フェルナンド・ロホ:アトレティコはやっかいな相手だったが、難しいカルデロンで勝点3を取って決めた。ああいう試合を勝ちきれるところに、いまのバルサの強さがあるんだろう。
 
豊福:拮抗した試合の中で、メッシの決定力がモノを言いました。
 
ロホ:今シーズンのメッシは前半戦は決して良くなかった。批判するメディアも多かった。私の『マルカ』紙でも、かなり辛辣な記事を書いたことがあった。
 
豊福:序盤戦は明らかに良くなかったですからね。いまのようなキレがなかったですし。
 
ロホ:すべてが変わったのは、1月のアノエタの夜だよ。冬の休暇明けあの試合で、バルサはレアル・ソシエダに敗れた。あの時点では、レアル・マドリーが優勝するだろうと言われていたよね。
 
豊福:その後メッシとルイス・エンリケの対立があり、メッシは右サイドでのプレーが明らかに嫌そうだった。
 
 クラブの会長選挙がシーズン後に実施されることが発表され、スビサレータSDが解任。アシスタントとしてスビサレータの下で学んでいた、サポーターに人気のカルレス・プジョールも去った。ピッチ内外でボロボロで、スタジアムの雰囲気も悪かった。
 
ロホ:あそこで一度リセットできたから、リーガで優勝し、CLと国王杯で決勝にまで残ることができたんだろう。あれ以降のバルサの勢いは凄かったから。
 
豊福:バルサの勝因をいくつか挙げてもらえますか?
 
ロホ:ルイス・スアレスは、黄金期が終わり、下り坂に入っていたバルサを再び上昇気流に乗せる、決定的なピースだった。
 
豊福:近年の前線の選手を振り返ると、ビジャもアレクシス(サンチェス)も献身という点では貢献をしていました。相手のサイドバックやセンターバックを追いかけ、それなりにゴールも挙げた。それでも、スアレスの裏への抜け出しやトラップの巧みさ、個人での打開力にはかなわない。
 
ロホ:ずっと走り続けて裏を狙っている。抜け出すタイミングのセンスも抜群だ。それに、彼のように闘志に溢れ、戦える選手というのは、言ってみればバルサらしくない。それがポジティブな化学反応を生んだね。
 
豊福:バルサに別の側面をもたらしましたよね。それで、パサーとしてのメッシが生きるようになった。
 
ロホ:右サイドからドリブルするメッシから、センターバックを引き連れて裏へ抜けるスアレス、そのもうひとつ裏のネイマールへ――という形は、もっとも効果的な攻撃パターンのひとつだった。
 
豊福:トリデンテの中では、メッシ、スアレスと比べると評価は少し落ちるかもしれませんが、ネイマールの貢献も忘れてはならないと思います。バイエルン戦を見ても分かるように、重要な試合でゴールを決めていますしね。
 
ロホ:トリデンテの破壊力が優勝の最大の要因だったことは間違いない。今シーズンに関しては、『MSN』(メッシ、スアレス、ネイマール)が『BBC』(ベンゼマ、ベイル、C・ロナウド)を上回ったということだ。

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