サッカーを楽しむ初心に立ち返らせてくれた「九州レジェンズ vs ユベントスレジェンズ」

2015年05月05日 サカクラゲン

サッカーの魅力を伝え、発展に貢献する価値ある試み。

試合前、エスコートキッズたちとともに入場したトレゼゲ(右)とスキラッチ(左)。前者はハットトリックの活躍で会場を沸かせた。 

 現役時代にユベントスに所属し、ワールドカップや様々な大会で多くのサッカーファンを虜にした往年の名プレーヤー集団「ユベントスレジェンズ」と、九州のJクラブや九州に縁のある元Jリーガー構成された「九州レジェンズ」のスペシャルマッチが、5月4日にベストアメニティスタジアムで開催された。
 
 同イベントは、サッカーの素晴らしさを伝えると同時に、JリーガーOBの活動の場を設けることにより、選手のセカンドキャリアも考えながら、九州のサッカー界の発展に貢献するのが狙いだ。サガン鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスは、イベントの実行委員会の中心として活動。発起人のひとりであるGK室拓哉(元・鳥栖ほか)は、「これだけのレジェンドが集まり、すごく楽しみ」と話し、企画の段階から積極的に宣伝活動もしてきた。
 
 その甲斐あって、当日は1万4943人のサッカーファンがスタジアムに集結した。ゲームは、九州レジェンズがユベントスレジェンズを5-3で下したが、スタジアムが一番盛り上がったのは、フランス代表としてワールドカップでも活躍したダビド・トレゼゲがゴールした瞬間だった。今年1月に現役引退する意向を表明したストライカーは結局、ハットトリックを決める活躍を見せた。
 
 九州レジェンズを指揮をしたアルベルト・ザッケローニ前日本代表監督は、「試合の結果よりも、まずは試合を楽しんでもらえたことが嬉しい。(選手たちは)スピードは落ちても、テクニックの質は衰えていないし、なにより彼らが一番サッカーを楽しんでいたようだ」と振り返った。
 
 普段、ホームチームを応援する鳥栖サポーターも、この日はチームを問わず選手がボールを触るだけで歓声を上げていた。純粋にサッカーの面白さを目の当たりにしただけでなく、いくつになってもサッカーを楽しむことを実感できたのではないだろうか。
 
 ピッチに立っている選手の名前も栄光も知らないはずの子どもたちでさえ、ビアンコネロ(イタリア語で白と黒の意)のユニフォームを纏う"オジさん"たちに声援を送る姿に、「サッカーは国境を超える」と言われる理由が分かる気がした。
 
 1990年のイタリア・ワールドカップで6得点を挙げたサルバトーレ・スキラッチは、「試合はフレンドリーマッチだったかもしれないが、みんな全力でプレーした。激しいぶつかり合いもあったし、削りにも行っていた。でも、これだけ多くのファンから声援をもらい、ボールがあって、ゴールがあれば、みんなサッカー選手としてのDNAを持っているので当たり前のこと」と語る。
 
 きっと、ピッチに立った選手たちは同じ気持ちだっただろう。そして、その真剣なプレーを見た人たちは、サッカーの魅力を改めて感じたことだろう。前述の室氏は「この感動を、これで終わりにはしません。まだここに来られなかった仲間たちがいるので、次につなげていきます」と力強く宣言した。
 
 Jリーグも様々な試みでサッカーの魅力を伝えてはいるが、今回のような興行的な要素があっても十分にサッカーの魅力は伝えることができる。次のイベントがとても楽しみだ。
 
取材・文・写真:サカクラゲン(サッカージャーナリスト)
 
 
[レジェンドマッチ2015]
九州レジェンズ     5 – 3  ユベントスレジェンズ
得点/九州レジェンズ=前園真聖(22分)、松原良香(37分)、久保竜彦(55分)、新居辰基(63分、89分) ユベントスレジェンズ(74分、78分、82分)
 
ユベントスレジェンズ スタメン
GK:ステファノ・タッコーニ、DF:モレノ・トリチェッリ、イゴール・トゥドール、ゾラン・ミルコヴィッチ、ルイージ・デ・アゴスティーニ、MF:マッシモ・ボニーニ、イヴァーノ・ボネッティ、ロベルト・ガリア、FW:サルバトーレ・スキラッチ、ファブリッツィオ・ラバネッリ、ダビド・トレゼゲ、監督:ジャンルーカ・ペッソット
 
九州レジェンズ スタメン
GK:室 拓哉、DF:ホベルト、佐伯直弥、西森正明、山田卓也、MF:エジミウソン、本田泰人、佐藤由紀彦、三浦淳寛、前園真聖、FW:松原真聖、監督:アルベルト・ザッケローニ
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事