【松本】度胆を抜いたスーパーゴール。レフティ前田の巨大なポテンシャルとは?

2015年05月03日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

まさに“ぶち抜く”という表現が相応しい、会心の一撃!

試合を重ねるごとに存在感を高めている前田(22番)。低迷するチームの救世主となれるか。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 試合後の表情は冴えないものだった。視線をピッチに落としたまま、前田直輝はロッカールームへと引き上げていった。
 
 勝てなかった悔しさは当然ある。そして、自らの力量不足も痛感していた。
 
「試合全体を見ると、シュートは1本で終わっているし、脅威になるにはまだまだ」
 
 しかし、その1本は貴重な同点弾だった。自身にとって記念すべきJ1初ゴールは、今節の月間ベストゴールにノミネートされるほどのスーパーな一撃だった。
 
 相手陣内の右サイド深くで、田中隼磨からのスローインをダイレクトでリターン。縦にボールを運んだ田中の背後に回ると、絶妙のタイミングでヒールパスが来る。これを右足でコントロールし、ペナルティエリアに差しかかる手前で迷いなく利き足の左足を一閃――。
 
「ワンタッチした瞬間にシュートコースが見えた」
 
 放たれたシュートは一直線にゴールへと向かい、GKが懸命に伸ばした手をあざ笑うかのように、逆サイドのネットを豪快に揺らす。スピードもコースも申し分ない。まさに"ぶち抜く"という表現が相応しい、ファインゴールだった。
 
「カットインからのシュートは自分の得意な分野でもある。入って良かった」
 
 卓越したボールスキルの持ち主で、どちらかと言えばドリブラーのイメージが強い前田だが、ミドルシュートも彼の重要な武器であることを証明してみせた。
 
「あの距離からでも決められるぞと、そういうのを見せたかった」
 
 わずか1本というシュート本数には納得がいっていないようだが、得点シーン以外でも見せ場はいくつもあった。キレのある切り返しで相手DFを翻弄する一方、とりわけCFのオビナとのテンポの良いパス交換は可能性を感じさせるもので、前田本人も「(オビナとの)距離感は大事にしているし、オビナがやりやすいと思ってくれたら嬉しい」と、ふたりのコンビネーションは松本の攻撃面における貴重なオプションになりそうだ。
 
 新潟戦のパフォーマンスを勝点に結び付けられなかったものの、大きなアピールにはなった。今季から松本に新天地を求め、開幕前からそのポテンシャルを随所に感じさせていた20歳のレフティは、試合を重ねるごとにその存在感を高めている。低迷するチームの救世主として、今後のさらなる活躍に期待したい。

取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
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