2試合14発のゴールショーの裏に潜む課題…なでしこジャパンが“持っていないもの”

2021年04月11日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

14得点のうち、“それ”でのゴールはわずか1本

パナマ戦でフル出場し、攻撃を牽引した長谷川。しかし試合後には自身のミドルシュートの精度を課題に挙げた。

 なでしこジャパンこと日本女子代表は4月シリーズ(パラグアイ戦、パナマ戦)を連勝で終えた。どちらも格下相手だったとはいえ、約3か月後に控える東京五輪に向けて、弾みのつく活動になったに違いない。

 パラグアイ戦とパナマ戦は、ともに7-0で、2試合合計14得点。相手を圧倒してゴールを量産したなでしこジャパンだが、その攻撃面であっても、小さくない課題が残る。

 14得点のうち、ミドルシュートあるいはロングシュートは、わずかに1本なのである。杉田妃和が左足で決めたパナマ戦61分のゴールくらいだ。

 もちろんよりゴールへの確率を優先したため、必然的にゴール付近でのシュートチャンスが多かった事実はある。それでも、ミドルシュートやロングシュートがまったくなかったわけではなく、その際に大きく枠を外すシーンは少なくなかった。パラグアイ戦の48分(鮫島彩)、68分(杉田)、パナマ戦の7分(籾木結花)、11分(中島依美)、70分(長谷川唯)などが、その代表的なシーンと言える。

 パナマ戦後、攻撃面でのテンポの変化や工夫が足りなかった語った高倉麻子監督はさらに、こう振り返っている。
 
「ミドルシュートは私たちがなかなか持っていないものだと思います。ずっとそういったアプローチは選手にかけてはいます。パラグアイ戦ではちょっと枠は大きく外れましたけど、だいぶ遠くからもトライはしてくれていた。でも今日はすごく少なかった。そこは引き続きずっと課題として選手と共有しながら、選手に要求していきたいです。

 クロスやセットプレーのところも、いろんな形を探りながらトレーニングは積んでいるんですが、やはりまだまだ精度が足りないと言いますか、そこも修正ポイントだなというのは分かりながらトレーニングは積んでいますが、まだ発展途上というか、まだ成果としては見えてこないので、引き続き努力し続けたいなと思います」

 選手も同様の感覚を抱いているようだ。

 パナマ戦で90分間に渡り攻撃をリードした長谷川唯でさえ、「今日はたくさん点を取って勝てましたけど、それでも質が低い場面があったので、自分自身もまだまだシュートのところは課題ですし、まだまだやることはたくさんあるなと思いました」と反省の弁を述べている。

 コンビネーションでの崩しがハイクオリティであることを証明したのは間違いないし、最後まで攻撃的な姿勢を崩さなかったのは称賛に値する。それでも五輪に出場するような強豪国との対戦では、組織的な崩しだけでは心許ない。やはりミドルシュートという武器は持っておく必要があるだろう。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)
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