【チェルシー番記者】が語る武藤 「クラブは“見込みのある有望株”と高評価」

2015年04月21日 ダン・レビーン

横浜ゴムとの交渉が始まる前から武藤を調査。

武藤へのオファーについて、チェルシーを日常的に取材している番記者の見解は――。 (C) SOCCER DIGEST

 チェルシーが武藤嘉紀の獲得に乗り出している。移籍が決まれば、1905年創立のクラブ史上初の日本人プレーヤーとなる。
 
 ほとんどのメディアが報道しているように、『横浜ゴム』とのスポンサー契約とまったく無関係ではない。来シーズンからユニホームの胸にその企業名が入る。
 
 とはいえ、武藤へのオファーは完全なるビジネス先行でないことも事実だ。武藤に対する調査は、横浜ゴムとのネゴシエーションが始まる前から進められていた。そしてチェルシーが誇るスカウトチームは、22歳の日本代表FWを優秀なプロスペクト(見込みのある有望株)と評価していた。
 
 さらに言えば、これまで韓国人選手を獲得していない事実からも、チェルシーが武藤をどう見ているか分かるはずだ。2006年からメインスポンサーは韓国の『サムスン』である。その間、韓国人選手へのオファーはもちろん、獲得の噂もなかった。
 
 では、移籍が決まったとして、武藤はチェルシーのトップチームで活躍できるのか。
 
 正直、現状では難しいだろう。
 
 チェルシーの新戦力は、大きく2つのタイプに分類される。ひとつはジョゼ・モウリーニョ監督が望んだ選手で、もうひとつはマイケル・エメナロTDが獲得した選手だ。モウリーニョが望んで獲得するのは即戦力であり、エメナロ主導の新戦力はいわゆる将来を見据えた先行投資である。
 
 新戦力について聞かれたモウリーニョはよく、「私のあずかり知るところではない」と答える。その選手はエメナロ主導の先行投資であり、武藤についての質問を受けたモウリーニョは、「私はオファーしていない」と返答している。
 
 しばらくは雌伏の時を過ごすことになるだろうが、それでも武藤にとってチェルシーに移籍するメリットは大きいのではないか。そこには超一流の環境があるからだ。モウリーニョのトレーニングメソッドを学び、ワールドクラスのタレントと直に触れ合うその経験は、間違いなく成長への糧となる。
 
 他のクラブへレンタルに出されることになったとしても、得るものは大きい。アトレティコ・マドリーで研鑽を積み、世界屈指の守護神としての定評を確立してチェルシーに復帰したのはティボー・クルトワだ。
 
 チェルシーの番記者として、それ以上にひとりのチェルシーファンとして、武藤にはあらゆる意味で期待している。
 
【記者】
Dan LEVENE|GetWestLondon.com
ダン・レビーン/GetWestLondon.com
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されていた地元紙『フルアム・クロニクル』でチェルシー番を務め、現在は同紙が休刊して全面移行したウェブ版『GetWestLondon.com』で引き続き健筆を振るう。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
【翻訳】
松澤浩三
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