【広島】チームの救世主へ――浅野拓磨の誓い

2015年04月16日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「(ゴールが)入らなければ、入るまでチャンスを作ればいい」

左がゲーム形式1本目、右が2本目のビブス組の布陣。故障の森﨑浩に代わって、浅野、柴﨑、ドウグラスが“2席”を争うことになりそうだ。

「ミスなんて全然怖くない。最後まで思い切りやれ!」

 オフ明けの4月15日、森保一監督の檄が吉田サッカー公園の練習場に響き渡る。

 広島は現在、リーグ戦で3試合連続ノーゴール中。ナビスコカップ3節の湘南戦で2得点を挙げたとはいえ、深刻な「ゴール欠乏症」に陥っており、3月14日の松本戦を最後に勝利から見放されている。加えて、開幕から5試合連続スタメンを務めた森﨑浩司が18日のFC東京戦を欠場する見込みだ(前節に腿を負傷)。それだけに、ゲーム形式のトレーニングは、シャドーのベストチョイスを探るかのように進められた。

 スタメン候補と目されるビブス組のシャドーに入ったのは、1本目が浅野拓磨と柴﨑晃誠、2本目がドウグラスと柴﨑(途中で左右をポジションチェンジ)だった。現時点では攻守のバランスに長けた柴﨑が"2席"の一角に入ることが有力だが、キーマンとなるのはやはり、直近の公式戦5試合で唯一得点を挙げている浅野だろう。

 浅野は得点が取れないチームの現状を、「たしかに全体のコンビネーションが上手くいっていない部分はありますけど、全部がダメなわけじゃないし、シュートまでは行けている。最後のクオリティを上げるだけかなと思います」と分析する。事実、1試合の平均シュート数15.0本(5節終了時点)はリーグトップ。それに対して、平均得点はリーグ16位の0.8点に低迷しており、決定力アップが"トンネル"脱却の鍵を握るのは間違いない。

「今は数少ないチャンスをモノにする力が、僕自身、そしてチームの課題でもあります。そこは周りになんと言われようと、根気強くやっていくしかない。(ゴールが)入らなければ、入るまでチャンスを作ればいいだけのこと」

 そう力強く語る浅野に対し、森保監督は自信を持ってやれとアドバイスを送ったという。「監督は自分の得意なところも、苦手なところも分かってくれている。迷うのが一番良くない。ゴールに向かってガムシャラにやれば、きっとなにか生まれるはず」――。若きアタッカーのビジョンは明確だ。

 浦和、神戸、名古屋が"広島対策"で3-4-2-1を仕掛けてきたのとは異なり、FC東京は4-3-1-2を崩さず、自分たちのスタイルで挑んでくるだろう。森重真人や太田宏介ら日本代表選手を擁する最終ラインを、「自分よりも格上」としながらも、怯むつもりはまったくない。

「リーグで一番失点していないチームに自分の力を見せたいし、彼ら相手に得点できれば、大きな自信になると思います。自分がゴールを取って、流れを変えられればいいですね」

 クラブハウスに引き上げる浅野に、「リーグ戦初ゴール」のフレーズを投げかけると、不敵な笑みを浮かべ、ひと言「そうですね。まずはそこです!」。そう言い切る弱冠20歳の背中は、実際のそれよりも大きく見えた。FC東京戦は、チームの"救世主"となるべく、真価が問われる一戦になりそうだ。

取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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