【CLポイント解説】第2レグの鍵を握るのはアトレティコの“勇気”とマドリーの“柔軟性”

2015年04月15日 遠藤孝輔

持ち味を発揮したのはマドリーの攻撃を封じ切ったアトレティコ。

1)好セーブを連発した若き守護神
 
 ビセンテ・カルデロン(アトレティコ・マドリーの本拠地)に乗り込んだ今シーズンの3試合で、一度もゴールを奪えなかったレアル・マドリーにとって、これ以上ないチャンスが訪れたのは、開始2分だった。
 
 ボールの目測を誤ったゴディンのミスを逃さず、最終ラインの裏に抜け出したベイルが、相手GKとの1対1を迎えたのだ。しかし……。不振に喘いでいるウェールズ代表が放ったシュートは、オブラクの好セーブに遭う。
 
 このワンプレーをきっかけに、波に乗ったのがアトレティコの若き守護神だった。
 
 C・ロナウドのFK(9分)、ベイルの強烈なミドル(31分)、ハメスのコースを狙ったシュート(36分)など、枠内に飛んできた弾道をことごとく防ぎ、守勢に回る時間が長かった前半を無失点で切り抜けたチームの立役者となった。
 
2)持ち味を発揮したアトレティコ
 
 試合展開は大方の予想通り。ボールを支配して主導権を握り、最終局面で違いを作り出そうとするマドリーに対し、アトレティコは2ライン(DFとMF)間をコンパクトに保ち、自陣のスペースを消すと同時に数的優位の確保に専念した。
 
 後者の守備意識は極めて高く、自陣での献身的な守りが光ったCFマンジュキッチを含め、全ての選手がハードワークに精を出していた。
 
 特に鉄壁だったのはバイタルエリアの守りで、ボールホルダーを一気に4人で囲い込むなど、マドリー攻撃陣を窒息させるような猛プレスや球際の強さは圧巻だった。
 
 ミスらしいミスがなかったオブラクに代表される集中力の高さも特筆に値し、最後まで破壊力抜群のマドリーにゴールを割らせなかった。その意味で、持ち味を存分に発揮したのはホームチームの方だろう。
 
 シメオネ監督は前日会見で「勝つことが最も重要」と語っていたが、宿敵相手にアウェーゴールを許さなかった試合運びには満足しているはずだ。
 
3)得意のカウンターは切れ味を欠く
 
 とはいえ、アトレティコは完璧だったわけではない。迫力不足が否めなかったのは、得意のカウンターを含めた攻撃面だ。守備に労力を割いていた反動からか、中盤以下の押し上げるスピードが遅く、2トップの個人技に頼りがちだった速攻は切れ味を欠いた。
 
 得点の匂いをかすかに漂わせたのは、それぞれ果敢なオーバーラップを見せた左SBシケイラ、右SBファンフランのクロスに、グリエーズマン、アルダが頭で合わせた45分と49分のシーンくらいだった。
 
 敵地サンチャゴ・ベルナベウでの第2レグで、いかにゴールをこじ開けるか。この日、精彩を欠いていたコケの奮起に加え、時間帯や得点状況によってはリスクを冒した攻撃が必要となってくるはずだ。
 
4)マドリーが改善すべきは…
 
 C・ロナウドやベイルがスピードに乗って、敵陣に侵攻するような攻撃に持ち込む場面が皆無に近かった一方で、S・ラモスとヴァランヌの両CBがマンジュキッチを封殺する手堅い守りを披露したマドリーも、やはりオフェンスの改善が求められる。
 
 理想は相手CKのピンチを防いだ直後、ヴァランヌが意外性十分のラン・ウィズ・ザ・ボールで一気に持ち上がり、最後はハメスがエリア内でシュートを放つまでに至った43分のような展開だろう。
 
 C・ロナウドやベイルの爆発的なスピードを活かすためにも、そうしたカウンターの頻度を増やせるかが鍵となりそうだ。
 
 今シーズン7戦未勝利となった"天敵"を相手に、第2レグではボールポゼッションに拘泥せず、相手にボールを委ね、逆襲の好機を窺う――マドリーがそのような戦い方を選んだとしても何ら不思議はない。
 
文:遠藤孝輔
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事