【清水】正解に映った残り30分の戦い方

2015年04月13日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

引いて守るよりも、主導権を握る展開を。

前線に起点を作って厚みのある攻撃を仕掛けた後半は、大前(10)が前を向いてプレーする場面が増えた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 宇佐美の日――。そう言っても大げさでないほどのインパクトを残した相手エースに2ゴールを見舞われ、清水はこれで公式戦6連敗。リーグ戦の順位も15位にまで落とした。
 
 試合序盤の清水のプランは、「引いて守ってカウンター」だった。主導権を握られる可能性の高い相手に対し、今季よく使う"常套手段"である。その狙いどおり8分に平岡、10分には長沢がショートカウンターからゴールへと迫った。
 
 大前のシュートが藤春に防がれた28分の決定機を含め、どれかひとつでもゴールに結びついていれば……。「前半のうちにカウンターから決め切れなかったのがすべて」(長沢)といった見方もできる。その点、実は紙一重の勝負だったのかもしれない。
 
 ただし、G大阪相手に守備の時間が長くなるのは、最初から避けるべきだったのではないか。そんな印象も抱いた。宇佐美とパトリックは、どんなに守備を固めても独力でこじ開けてくる。前者のテクニックと後者のパワーは正直、別次元だった。精彩を欠いていた遠藤がより攻撃に絡んで強力2トップを操っていたら、むしろ3失点では済まなかっただろう。
 
 そうした点を踏まえれば、P・ウタカを投入した残り30分の戦い方が正解に映った。引いてカウンターを狙うのではなく、相手陣内にくさびを打ち込み、前線にしっかり起点を作ってからサイドに展開してゴールに迫る姿は、どこか活き活きとしていた。ボランチも押し上げて縦パスを狙い、ゴールに背を向けてボールを受けることの多かった大前や村田も前を向いて仕掛けられるようにもなった。
 
 もちろん、2点をリードした「G大阪が引き気味になった」(六平)ことも加味すべきだが、主導権を握るサッカーを展開してピンチが減ったのも確か。結局は宇佐美のスーパーゴールに屈したものの、勝利の機運は守備を固めた前半以上に高まっていた。
 
 もっとも、結果が出なかった以上、いずれの戦い方にも改善点は残されている。前後半で別の顔を覗かせたG大阪戦を終え、指揮官は「90分間のマネジメント」と「割り切り」を修正ポイントに挙げた。
 
 大榎監督は「失点がかさんだ昨季の反省を込め、今季は守備から入りたい。1試合・1失点を最低限の目標としたい」と常々語る一方で、「どんな相手にも主導権を握るサッカー」を標榜してもいる。その理想と現実のバランスの調和が、不振脱却の近道になるのだろう。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)
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