【神戸】スプリント回数と走行距離が示す、小川慶治朗の武器と"ハリル流"へのフィット度

2015年04月13日 本田健介(サッカーダイジェスト)

甲府戦では4得点すべてに関わる活躍を見せる。

アシストはつかなかったものの、甲府戦では全4得点に絡む活躍。走力を活かしたパフォーマンスを高いレベルで維持できれば、A代表入りも見えてくるはずだ。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

 5節、ホームで甲府と対戦した神戸は4-1と大勝し、リーグ戦2連勝を飾った。勝利の立役者はなんと言っても2ゴールを決めた石津だろう。しかし、その陰で走力を活かしてチームを支えていたのが、自身も1ゴールを奪った小川だった。
 
 今季からJ1リーグで導入されたトラッキングシステムにおいて、小川はリーグ1位のスプリント回数を誇る(5節終了時点)。その回数「47」は2節の川崎戦でマークしたもので、3節のFC東京戦での走行距離、13.02キロもリーグ7位に位置する。
 
 そして3-4-2-1の2シャドーで先発した甲府戦でも、スプリント回数でリーグ4位タイとなる38回を記録し、走行距離ではこの試合でトップの12.18キロをマークした。「以前から走ることは意識していたので、当然だと思っている」と平然と話す男は、いつもと変わらずに攻守に駆け回り、チャンスに絡み続けた。
 
 先制点を挙げた4分の場面では、高橋峻が右サイドを抜けると、左サイドからニアに走り込んでDFを引き付け、石津のゴールを演出した。また2点目のシーンではハーフウェーライン付近から一気にスピードを上げて味方のパスに反応し、再び石津のゴールにつなげている。さらに3点目の際には、今度は左からのクロスにニアで合わせ、その流れから三原のゴールが生まれた。
 
 そして極めつけは、73分の得点シーンだ。P・ジュニオールが相手DFからボールを奪うとゴール前へ猛然と駆け込み、こぼれ球を華麗にゴールへ叩き込んだ。アシストは付かなかったが、4得点すべてに関わる活躍。それ以外にもスルーパスに抜け出し2度の決定機も迎えている。最後までその足が止まることはなかった。
 
 以前から繊細な技術を持つアタッカーとしては珍しく、豊富なスタミナやスプリント能力が高く評価されてきた。そして今季、ネルシーニョ監督の下でプレーすることによってさらに意識が変わったと話す。
 
「守備面での(相手の)追い方に対する考え方が変化した」と、ただ闇雲にプレスをかけるのではなく、目的を持って相手を追い詰めるようになったという。実際、前述したトラッキングシステムで上位に入った川崎戦、FC東京戦では守備面でチームに大きく貢献している。
 
 ハリルホジッチ監督の初陣となった3月末のチュニジア戦、ウズベキスタン戦の後、クラブに戻った代表選手たちの走行距離やスプリント回数が格段に増えたというニュースが先日報じられていたが、そうした観点から見ると小川のプレースタイルは現在の日本代表にマッチしていると言える。
 
 ユース時代から"プラチナ世代"の一員として名の知れた存在だったが、年代別代表では2009年のU-17ワールドカップを経験しただけで、その後のメジャー大会とは無縁の道を歩む。A代表への招集経験もないが、22歳で神戸の中心選手となった今からが、大輪の花を咲かせる時期なのかもしれない。
 
「チャンスを外し過ぎてしまった」と甲府戦後に反省したように、今後は個人としてもしっかり結果を残していく必要があるだろう。ただトラッキングシステムによって、改めて走力のレベルの高さが実証された。この力をコンスタントに発揮しながら、フィニッシュの局面でより力を発揮できれば、近い将来のA代表入りも――そんな淡い期待を抱かずにはいられない。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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