【三浦泰年の情熱地泰】少年時代、カズより巧い子どもは何人もいた…プロ選手になるための躾とは何か?

2021年01月28日 サッカーダイジェストWeb編集部

育成年代の段階で必要なプロになるための基本的な考え方が伝わっているだろうか?

2月に54歳を迎えるカズ。サッカーへの飽くなき情熱の根源となっているものはどのようにして培われたのか? (C) SOCCER DIGEST

 1965年僕はこの世に産まれた。

 日本のサッカーの歴史は、「前にボールを蹴れ」「コーナーフラッグに向かって攻めろ(蹴ってくれ)」であったのは、僕の少年時代はもとより、読売クラブへ入団する前、そして今日まで続いているのかもしれない……。

 少年の頃、静岡の選抜に選ばれてプレーをすると「ヤス、持つなー」と監督から指示が出た。

 僕の所属する城内FCはそんな時代の中で個人技、ひとりでボールを扱う技術を大事にするクラブであり、当時では珍しいスタイルのチームであった。

 特に個人の技術、リフティング、ドリブル、トラップ、「止めて蹴る」のトレーニングが中心で、パワーを使うトレーニング、強く蹴る、速く走るといった所には余りアプローチを掛けられなかった……。

 シュート、ロングキックで用いるインステップを使うキックよりも、インサイドキックを多用し、ノールックパスや微妙に浮かすパス、ドリブル、フェイント、浮かして抜くといった、どちらかと言うと南米スタイルの異色なサッカーを叔父さんである監督が志向していた。

 僕らはトラップを1cm狂ってもトラップミスだと言われ、リフティングは1000回は当たり前で、何万回とつけないと怒られた。

 リフティングは試合中での浮いたボールのトラップのためにやっているんだと言われ、サーカス団に入れるためにやっているわけではないと、上手くできるようになってからも言われた(笑)。ここはメンタルが鍛えられたかもしれない。

 年末に少年少女サッカースクールの講師で呼ばれて愛知県岡崎市へ行った時、スクール生のひとりが良い質問をした。
「プロになるために一番やっていて良かったトレーニングは何ですか?」

 他クラブからも各ポジションの元選手、現選手がユニークな答えも入れながら、僕はリフティングと回答。そして偶然にも、(小野)伸二もリフティングと答えた。

 リフティングを1ミリも狂わずつけることにより自信が付き、体力がつき、精神力と集中力が宿り、技術が高くなる。メンタルとフィジカルとテクニックが同時に鍛えられるトレーニングがリフティングだったのである。

 ただ今のサッカーはそれが足先だけの技術になったり、ただ前に蹴ってセカンドボールを狙うリスクを冒さない"トライしない"戦い方だったり、言い方はズルいが中途半端な見せかけのプレーが多いような気がする。

 プロ選手にもそのような選手はいるが、育成年代でどんな選手を育てていくかというなかで、勝利と個人、チームと選手個人のどちらかに偏ることで、中途半端な選手に育っているのではないだろうか?

 特徴を活かす、長所を伸ばすという聞こえの良い考え方に惑わされ、「サッカーを知る、サッカーの本質を知る」という選手の足りない部分にアプローチをかける厳しい要求が減ってはいないか。育成年代の段階で必要なプロになるための基本的な考え方が伝わっているだろうか?
 

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