「僕ってマフィアっぽくないだろ?(笑)」忘れられない“親日家”の元イタリア代表の言葉。タトゥーの扱いはどうあるべきか

2021年01月07日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

ユース選手のタトゥーを禁ずるクラブも

ローマのレジェンドであるデ・ロッシ。親日家としても知られている名手のタトゥーに対する言葉は印象深いものだった。 (C) Getty Images

 タトゥーの在り方が問われる騒動が起きている。事の発端となったのは、昨年の大晦日、井岡一翔が田中恒成とのWBO世界スーパーフライ級王者決定戦だ。

 試合は井岡が8回途中TKOで制し、2度目の防衛に成功したのだが、この一戦から5日経過した1月5日に左腕のタトゥーを隠さずリングへ上がったチャンピオンにルール違反による処分が下るとのニュースが流れたのだ。

 タトゥーを隠さなかった井岡が、日本ボクシングコミッション(JBC)が定める「日本ボクシングコミッションルール」の第86条で定められている「次の各号に該当するボクサーは、試合に出場することができない」「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」に該当する、というのがその理由だった。

 まだ正式な処分は決定していないものの、JBCの対応については、賛否両論を巻き起こしている。

 SNS上では「時代錯誤がすぎる」「ルールを改めるキッカケにすべきだ」という批判が殺到。一方で「ルールはルールだ」「タトゥーが良いとかではなく、規則は守るべきだった」とJBCの決定に肯定的な意見も目立った。

 では、サッカー界はどうなのか。日本ではスポンサーとの兼ね合いから露出を禁じる場合があるという。タトゥーへの偏見が少ない欧州でも、ブンデスリーガの強豪RBライプツィヒのようにユース選手の刺青を禁じているクラブもある。

 筆者には日本でタトゥーを巡る騒動が起きるたびに思い出すサッカー選手の言葉がある。かつてローマのバンディエラとしてセリエAで人気を博し、親日家としても知られているダニエレ・デ・ロッシが、2018年に訪日から帰国した際に、地元紙『Il Messaggero』で「伝統文化には大きな敬意を払わないとダメだ」と前置きをしたうえで明かしたものだ。

「日本へ行く前にタトゥーをあまり歓迎していない人がいることを知った。悪い意味でのサプライズを避けるために、どこなら行っても問題がないのか、どこへ行ったらタトゥーを隠すべきなのかを事前に調べたよ。

 僕らは観光客でしかないから注意深く振る舞った。タトゥーは昔、マフィアを連想するものだったから、日本では高齢の方にあまり受け入れていないようだ。でもさ、僕ってマフィアっぽくないだろ?(笑)」

 デ・ロッシの言う通り、罪人に入れ墨をしていた時代もあった日本には独自の『文化』が根付いており、タトゥーへの拒否反応は少なくない。だが、井岡の一件でJBCに非難が相次いだことが象徴するように、タトゥーに対する偏見を持たず、あくまでカルチャーとして「不快の念」を抱かない層は以前よりも増えているのだ。

 今回の騒動をキッカケに、ルール改正や偏見を断つための議論が活発化することを願っている。"今"を生きるアスリートのためにも……。

文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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