【浦和】決して“事故”ではない森脇良太の「奇跡の一撃」

2015年04月04日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

4月6日が誕生日。28歳のラストマッチでスーパーミドルを決める大仕事!

85分に左足でスーパーミドルをねじ込んだ森脇。この一撃で勝利を収めた浦和が単独首位に立った。 写真:田中研治

 刻々と時間は過ぎ、残り5分に差し掛かろうとしていた。
 右ウイングバックの関根が敵陣の深い位置にドリブルで持ち込む。そして後方からオーバーラップしたストッパーの森脇へパスを送る。

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 ペナルティエリア手前でボールを受けた森脇は一旦切り返して、ゴールとGKの位置を確認。相手選手のブロックに遭って態勢を崩しながらも「コースが見えた」と思い切って左足を振り抜くと、ボールは緩やかな放物線を描いて、逆サイドのネットを揺らした。
 
 それまで浦和が決定的なものを含め20本以上のシュートを放ちながら攻略できずにいた松本ゴールを、本人いわく「奇跡の一撃」でついに射止めたのだ。
 
 森脇は「久々の感覚だった。『入るかな?』と思ったら、運よく決まった。ネンイチ(年に一回)っすよ。ネンイチの奇跡」と言って謙遜した。
 
 確かに約25メートルのミドルショットはそう何本も決まるものではないかもしれないが、決して単なるマグレや、俗にいう"事故のようなゴール"だったわけではない。浦和が狙う攻撃の形のひとつから決まった必然の劇的弾だった。
 
 森脇と槙野によるストッパーの攻撃参加は、ペトロヴィッチ監督の「どこからでもゴールを狙う」という戦術のなかで重要な位置付けを担う。彼らが前線に上がってきた際に狙っているのが、まさに森脇がボールを受けたペナルティエリアの手前あたり。ゴール前を固める相手選手が、そこまで前に出てボールを奪いに行くべきか迷う微妙なエリア――ギャップを突こうとする。
 
 森脇にとっての「好きなゾーン」でもあり、彼がそこでボールを持てばスタジアムを埋めた観衆も"なにか"が起きそうだと感じ取る。実際、それまで粘り強い守備を続けていた松本がその時だけ、《森脇ゾーン》への警戒を緩めたのは確かだ。森脇が自信を持ってシュートを放てる余裕を与えてしまったのだ。
 
 また、ゴールにつながる伏線もあった。その直前、森脇はよりゴールに近い位置でボールを持つとクロスを選択。しかし味方に合わずチャンスをフイにしていた。すると3バックを組む槙野から「モリ、もっと積極的に打っていいぞ」、那須からも「どんどん打っていこう」と声を掛けられていた。その仲間からのゲキが、迷いのないシュートにつながった。
 
「自分たちで苦しい展開にしてしまったけど、自分たちで厳しい状況を打開して勝てたことがなにより大きい」
 
 そう喜ぶ森脇は4月6日に29歳の誕生日を迎える。28歳で迎えるラストマッチでの劇的ゴールに「本当にハッピー。29歳の良いスタートを切れる」と、ひときわ大きな笑顔を作った。
 
 ちなみに誕生日の予定は「そういえば、今のところなにもない」そうだ。
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