天皇杯よりトライアウトを選択… 徳島・島屋八徳が見せた“叩き上げ魂”

2020年12月26日 海江田哲朗

島屋は地域リーグからそのキャリアをスタート

鳥栖時代にはJ1リーグも経験している島屋。写真:徳原隆元

 12月24、25日、千葉市のJFA夢フィールドで開催された「JPFAトライアウト」。2日目に登場した島屋八徳(徳島)のプレーが目を引いた。

 ライン間でボールを受け、攻撃の起点をつくる働き。狭いスペースでも機敏な身のこなしで前を向き、ドリブルを仕掛け、相手の急所をえぐるパスを通す。決定的な仕事を可能にする高い技術とアイデア。それがこれまでの彼を支えてきたのだろう。しかし、今季J1昇格を成し遂げた徳島ではわずか7試合の出場にとどまり、契約満了となった。

 トライアウト終了後、オンラインの取材に応じた島屋はこう語る。

「即席のチームですのでうまく機能したとは言い難いですが、スペースでボールを受けて周りを生かすプレーを心掛けました。フィニッシュに絡めなかったのが残念。シュートを打ってアピールしたかった」 

 気の利いた立ち位置を取り、周りの能力を引き出しながらゴールに迫るのが島屋の持ち味だ。周囲を生かし、自らも生かされる関係性がプレースタイルの生命線とも言える。そういった選手にとって、トライアウトのような場でアピールするのは簡単ではない。

「何人か知っている選手がいましたから、互いに声を掛け合ってやることを意識しました。『あの位置でフリックしてくれ』と言ってくれたり、自分といい距離感を保ってくれて助かりましたね」
 
 所属する徳島は、まだ天皇杯が残っている。新天地を求めるうえで、そこに賭けるのも選択肢のひとつだった。

「天皇杯に出場できるチャンスはあり、チームと活動していくことも考えました。一方、今年はコロナの影響で移籍マーケットの動きが例年より遅れていると聞いています。トライアウトの難しさは承知の上。自分にとっていい経験になりますし、まだまだこれだけ動けるぞというところを各クラブの方々に見てもらいたかった」

 島屋は地域リーグからそのキャリアをスタートし、JFL、J3、J2、J1とステップアップしてきた叩き上げ中の叩き上げである。エリート街道を歩んできた選手は知り得ない、経験値の厚みがある。

「今後について、高望みできる立場ではありませんが、上を目指すクラブの力になれればうれしいです。チームの昇格に立ち会ってきた自分の経験を還元し、さまざまなカテゴリーでプレーした体験を若い選手に伝えていきたい」

 現在、島屋は31歳。アタッカーとして卓越した能力は健在で、その力を必要とするところは出てくるはずだ。願わくば、残されたキャリアを存分に燃焼し、かつ豊かな経験を有意義に役立てられるチームと結ばれてほしい。

取材・文●海江田哲朗(フリーライター)

【トライアウトPHOTO】2020JPFAトライアウト初日

【トライアウトPHOTO】2020JPFAトライアウト2日目
 
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