「彼は天才だった」“神の手”を見逃した主審がマラドーナの死を悼む! 伝説のゴールに「疑いはあった」と回想

2020年11月27日 サッカーダイジェストWeb編集部

5人抜きゴールは「傑作だった」

世界を驚かせた神の手ゴールによって小さくないバッシングを受けた主審が当時の想いを振り返った。 (C) Alberto LINGRIA

 現地時間11月25日、元アルゼンチン代表MFのディエゴ・マラドーナが永眠した。

 ブエノスアイレス郊外の自宅で心臓発作を起こし、1時間近い治療の末に息を引き取った英雄の死は、世界に衝撃を与え、多方面から哀悼のコメントが寄せられている。

 数あるコメントの中には、マラドーナのキャリアに小さくない影響を及ぼした人物からの声もある。そのうちの一つが、1986年のメキシコ・ワールドカップで、アルゼンチンが"宿敵"イングランドと対戦した準々決勝で笛を吹いたチュニジア人主審アリ・ベンナシュールさんだ。

 マラドーナにとっては運命の一戦だと言える。スコアレスで迎えた51分に相手GKピーター・シルトンと競り合いながら"神の手(左手)"で値千金の先制点を決めると、興奮冷めやらぬ4分後には、巨漢CBテリー・ブッチャーらを擁するイングランド守備陣5人を一気に抜き去ってゴールを決める離れ業をやってのけたのである・

 神の手で決めた先制点は本人が「スタジアムにいる8万人を超える人間が同じように見間違えたんだ」と後にコメントしたこともあり、小さくない物議を醸した。

「世紀の誤審」とも揶揄されるアルゼンチンの天才が決めた神の手ゴールは、主審を務めていたベンナシュールさんの人生においても忘れ難きものとなっている。ポルトガル紙『O JOGO』によれば、マラドーナの訃報を受け、同氏はこう振り返ったという。

「もちろんハンドの疑いはあったが、手を使っていたところは見えなかった。写真を見てもらえれば分かるが、私は副審だったブルガリア人の(ボグダン・)ドチェフに助言を仰ぐと、『正当だ』と言われたから得点を認めたんだ」
 
 さらにベンナシュールさんは、「イングランドの選手たちのフェアな振る舞いに助けられた」とも回想している。

「ガリー・リネカーだけが、私に『お願いだ。審判、あれはハンドだ』と訴えてきたが、他の選手はプレーを始めようとしてくれた」

 後の5人抜きゴールについては、「傑作だった。マラドーナが危険なファウルをされると思ってPKを取るための笛を吹く準備もしていたが、ボールはゴールにあった。あの瞬間に立ち会えたことは誇りだ」と語る名レフェリーは、最後にこうアルゼンチンの英雄にメッセージを送っている。

「彼はフットボール界のレジェンドであり、天才だった」

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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