選手がよく動いたことでこれまでよりも攻撃が機能したミラン。
70分で交代を命じられた本田。観客のため息とブーイングを誘ったが、一方でセンスを垣間見せるプレーも……。これを活かせる環境はいつ整うだろうか。 (C) Getty Images
ミランはカリアリに3-1の勝利を飾り、24節チェゼーナ戦以来の勝点3を奪取した。3点を奪ったのは21節、崩壊状態にあったパルマ戦以来で、それ以前となると7節のヴェローナ戦までさかのぼらなければならない。
もっとも、盤石の勝利とは言い難いもので、相変わらず守備は脆弱、攻撃はなかなか噛み合わず。カリアリとの力の差はほとんどなく(むしろカリアリの方が上質の攻撃を披露)、勝敗が入れ替わっても、決しておかしくはなかった。また、物議を醸しそうなペナルティエリア外でのPK判定もミランを救った。
ミランが勝てたのは、復帰した中盤のアンカー、ナイジェル・デヨングの存在と最終ラインの踏ん張り、そしてカリアリのフィニッシュの精度が高くなかったこと。そして攻撃では、カリアリの守備がほかのこれまで対戦してきたチームと比べて雑だったことが大きな原因だった。
ミランはこの試合、序盤戦こそカリアリのプレッシャーの前にまともにボールを繋ぐことができなかったが、徐々にマークがずれてきたことで、ジェレミー・メネーズをはじめとした前線の選手が前を向いてプレーできるようになり、そこからチャンスを生み出していった。
ただ、相手の守備の問題だけがミランの攻撃を活性化させたわけではない。この日のミランは、これまで以上に選手が動いた。本田圭佑は右サイドに留まることなく、メネーズとポジションチェンジを繰り返したし、ルカ・アントネッリとイグナツィオ・アバーテの両SBも頻繁に攻撃参加を繰り返した。
こうした動きに対し、カリアリは守備陣が対応しきれなくなり、ミランはフリーでボールを受けたり、前を向いてスピードに乗ったドリブルを仕掛けたりするだけの余裕を得ることができた。
ミランは組織が未熟のため、純粋なCFを置くと攻撃が停滞してしまいがちだ。マリオ・バロテッリ、ジャンパオロ・パッツィーニ、フェルナンド・トーレス、マッティア・デストロ……いずれの選手も前線で孤立することが多く、また前線に張り付くことでスペースを消してしまい、味方選手のプレーをも窮屈にしてしまっている。
シーズン前、ステファン・エル・シャーラウィ、メネーズ、本田、そしてジャコモ・ボナベントゥーラのうちの3人を並べる、いわゆる0トップが、ミランの悩みを解消させた。3人がポジションを固定せずに流動的に動くことでスペースを生み出し、本田はこのスタイルから6ゴールを決め、チームも好スタートを切った。
しかし、相手の研究も進み、また怪我人の影響もあって0トップの効果が薄れてくると、再び前線にターゲットが必要という判断になって現在のスタイルに至るも、結局は以前と同じ問題に苦しめられている。
カリアリ戦では、デストロはポジションを固定していた。しかし他の選手が思い切った動きを見せたことで、これまでよりは攻撃が機能した。36分に素早いパスワークで相手ペナルティエリア手前までボールを持ち込んだプレーは、個人技頼みのミランが見せたプレーとしては、とても新鮮なものだった。
もちろん、各選手がポジションを変えれば、守備に回った際の不安は大きくなる。実際、カリアリ戦でもチャンスの後にはピンチが待っていた。とはいえ、今のミランは守備を固めても相手を封じ切ることは難しく、できるだけ攻撃に時間を費やすことが、結果的に守備の負担を減らすことに繋がる。
そんなチームにおいて、本田は重要な役割を担うこととなる。
カリアリ戦での本田は、2つの側面を見せた。ひとつは、位置的に孤立し、味方の動き出しもないなかでプレーの選択を迷い、結果的にチャンスを逸した姿。最近はセットプレーやフリーの場面でもキックの精度が狂うことが多々あり、プレー中も交代時にもスタンドから大きなブーイングを浴びてしまった。
しかしその一方で、味方と近い位置でプレーし、また周囲が効果的な動き出しを見せた際には、タイミング、コース、強さともに抜群のパスを通してチャンスを演出した。これまではアバーテとのコンビがミランの武器になっていたが、ポジションチェンジした際のアントネッリとの絡みも、今後のミランにおいては重要なプレーとなりそうだ。
背番号10という決定的な仕事が求められる本田は、カリアリ戦でも目に見える結果を残せずに終わったが、他の選手にはない"違い"も改めて見ることができた。前述のパス出しにおけるセンスは、ミランでは他に誰も持っていない稀有なものだ。
チームの戦術に合わせ、バランスを第一に考える本田は、チーム状態の低下とともに自身のプレーの質も下げてしまっている。この状況を打破するには、チームも本田も、ここらで思い切った動きを取ることが必要なのかもしれない。
もっとも、盤石の勝利とは言い難いもので、相変わらず守備は脆弱、攻撃はなかなか噛み合わず。カリアリとの力の差はほとんどなく(むしろカリアリの方が上質の攻撃を披露)、勝敗が入れ替わっても、決しておかしくはなかった。また、物議を醸しそうなペナルティエリア外でのPK判定もミランを救った。
ミランが勝てたのは、復帰した中盤のアンカー、ナイジェル・デヨングの存在と最終ラインの踏ん張り、そしてカリアリのフィニッシュの精度が高くなかったこと。そして攻撃では、カリアリの守備がほかのこれまで対戦してきたチームと比べて雑だったことが大きな原因だった。
ミランはこの試合、序盤戦こそカリアリのプレッシャーの前にまともにボールを繋ぐことができなかったが、徐々にマークがずれてきたことで、ジェレミー・メネーズをはじめとした前線の選手が前を向いてプレーできるようになり、そこからチャンスを生み出していった。
ただ、相手の守備の問題だけがミランの攻撃を活性化させたわけではない。この日のミランは、これまで以上に選手が動いた。本田圭佑は右サイドに留まることなく、メネーズとポジションチェンジを繰り返したし、ルカ・アントネッリとイグナツィオ・アバーテの両SBも頻繁に攻撃参加を繰り返した。
こうした動きに対し、カリアリは守備陣が対応しきれなくなり、ミランはフリーでボールを受けたり、前を向いてスピードに乗ったドリブルを仕掛けたりするだけの余裕を得ることができた。
ミランは組織が未熟のため、純粋なCFを置くと攻撃が停滞してしまいがちだ。マリオ・バロテッリ、ジャンパオロ・パッツィーニ、フェルナンド・トーレス、マッティア・デストロ……いずれの選手も前線で孤立することが多く、また前線に張り付くことでスペースを消してしまい、味方選手のプレーをも窮屈にしてしまっている。
シーズン前、ステファン・エル・シャーラウィ、メネーズ、本田、そしてジャコモ・ボナベントゥーラのうちの3人を並べる、いわゆる0トップが、ミランの悩みを解消させた。3人がポジションを固定せずに流動的に動くことでスペースを生み出し、本田はこのスタイルから6ゴールを決め、チームも好スタートを切った。
しかし、相手の研究も進み、また怪我人の影響もあって0トップの効果が薄れてくると、再び前線にターゲットが必要という判断になって現在のスタイルに至るも、結局は以前と同じ問題に苦しめられている。
カリアリ戦では、デストロはポジションを固定していた。しかし他の選手が思い切った動きを見せたことで、これまでよりは攻撃が機能した。36分に素早いパスワークで相手ペナルティエリア手前までボールを持ち込んだプレーは、個人技頼みのミランが見せたプレーとしては、とても新鮮なものだった。
もちろん、各選手がポジションを変えれば、守備に回った際の不安は大きくなる。実際、カリアリ戦でもチャンスの後にはピンチが待っていた。とはいえ、今のミランは守備を固めても相手を封じ切ることは難しく、できるだけ攻撃に時間を費やすことが、結果的に守備の負担を減らすことに繋がる。
そんなチームにおいて、本田は重要な役割を担うこととなる。
カリアリ戦での本田は、2つの側面を見せた。ひとつは、位置的に孤立し、味方の動き出しもないなかでプレーの選択を迷い、結果的にチャンスを逸した姿。最近はセットプレーやフリーの場面でもキックの精度が狂うことが多々あり、プレー中も交代時にもスタンドから大きなブーイングを浴びてしまった。
しかしその一方で、味方と近い位置でプレーし、また周囲が効果的な動き出しを見せた際には、タイミング、コース、強さともに抜群のパスを通してチャンスを演出した。これまではアバーテとのコンビがミランの武器になっていたが、ポジションチェンジした際のアントネッリとの絡みも、今後のミランにおいては重要なプレーとなりそうだ。
背番号10という決定的な仕事が求められる本田は、カリアリ戦でも目に見える結果を残せずに終わったが、他の選手にはない"違い"も改めて見ることができた。前述のパス出しにおけるセンスは、ミランでは他に誰も持っていない稀有なものだ。
チームの戦術に合わせ、バランスを第一に考える本田は、チーム状態の低下とともに自身のプレーの質も下げてしまっている。この状況を打破するには、チームも本田も、ここらで思い切った動きを取ることが必要なのかもしれない。