【CLポイント解説】積極性と冷静さによって息を吹き返したA・マドリー

2015年03月18日 遠藤孝輔

課題を残したスペイン王者と運に見放された好調レバークーゼン。

1)先制点を呼び込んだ前への積極性
 
 引いて守ってカウンターというリアクションサッカーに徹して0-1で敗れた第1レグとは異なり、A・マドリーは立ち上がりからハイプレスを敢行した。
 
 前線で溌剌とした動きを見せるグリエーズマンを中心に、レバークーゼンの2ボランチや最終ラインを執拗に追い込み、ビルドアップのコースを限定。高い位置でボールを奪取すれば、縦に速く攻めるチーム本来の強みを発揮しようとした。
 
 勝ち抜くには1ゴール奪取が最低ノルマだったそのスペイン王者が、先制点を挙げたのは27分。エリア手前で相手のクリアーボールを拾ったカニが頭で味方に繋ぐ。そのパスを受けたM・スアレスがダイレクトで左足を振り抜くと、グラウンダー性のボールが相手DF当たってネット左隅に吸い込まれていった。
 
 シュートの軌道が変わるという幸運に恵まれたが、第1レグで背負ったビハインドを帳消しにしたかったA・マドリーの前へ出ようとする積極性が、早い時間帯でのゴールに結び付いたのは間違いない。
 
2)堅牢なゴディン不在の守備陣
 
 ベララビのシュートが枠の左に逸れた10分の場面をはじめ、何度かピンチに直面したものの、最終ラインの柱であるゴディンが出場停止だったA・マドリー守備陣は、23分に守護神モジャが負傷交代する不測の事態にも動じず、上々のパフォーマンスを披露した。
 
 ゴディンの代役を担ったCBヒメネス、急きょ出場したGKオブラクを含めた全員が最後まで高い集中力を保ち、延長戦を含めた120分間を無失点で切り抜けてみせた。
 
 冴えていたのは、レバークーゼン自慢の2列目トリオに対するケアだ。チャルハノール、ベララビ、ソン・フンミンがボールを持って前を向いた際は複数人で素早く囲い込み、縦へのドリブル突破を阻止するか遅らせていた。
 
 特に堅固だったのが、バイタルエリア付近の守り。この3人のいずれかに良い状態でミドルを打たれたり、エリア内までドリブルで侵入されることは皆無に近かった。
 
3)従来のイメージを覆した敗者
 
 対するレバークーゼンも、決して攻守に精彩を欠いていたわけではなかった。
 
 ダイレクトパスを多用した仕掛けは何度か相手のプレス網を切り裂いていたし、34歳の老獪なCBスパヒッチや21歳の新鋭ウェンデル、ボランチのカストロの献身的な守りが光った守備はそれなりの強度と安定感を備え、2試合で1ゴールしか許さなかった。しかも、その失点は前述の通り、運に見放された格好のものだ。
 
 第1レグは内容と結果で相手を上回り、この第2レグでは敵地で一進一退の攻防を繰り広げた――。
 
 最終的にPK戦で命運が尽きたものの、昨シーズンのファイナリストを土俵際まで追い詰めたのは事実。「ベスト16が関の山」という近年のレバークーゼン像とは異なるイメージを残した。
 
4)課題はフィニッシュの質不足
 
 一方、辛くも8強に名乗りを上げたA・マドリーの課題は、フィニッシュの質不足。アルダの至近距離弾をレノに防がれた80分の決定機逸をはじめ、サポーターが頭を抱えるような稚拙なフィニッシュが少なくなかったからだ。
 
 コケのピンポイントパスを起点とする鋭いサイドアタックや、グリエーズマンやアルダの秀逸なドリブルを織り交ぜた速攻は悪くないだけに、やはり仕上げのクオリティー向上が求められる。
 
 鍵を握っているのはCFマンジュキッチか。ここまで公式戦7試合連続で、流れのなかでのゴールがない主砲の覚醒が待たれる。
 
文:遠藤孝輔
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