【日本代表への推薦状】柏で絶対的な存在に登り詰めた江坂任。「ファンタスティックな選手」と絶賛するのはゴール量産中の…

2020年10月15日 鈴木潤

浦和の包囲網を苦にせず、攻撃に変化を与え続けた

公式戦10ゴールとコンスタントに得点を重ねている江坂は「チームを勝たせること」を目標に掲げている。写真:田中研治

[J1リーグ22節]柏1-1浦和/10月14日(水)/三協フロンテア柏スタジアム

 41分、浦和ディフェンスの背後のスペースへ抜け出した江坂任は、三丸拡から出たパスを受けるとボックス内に侵入した。そしてカットインで岩波拓也のマークを外し、ニアサイドにグラウンダーの鋭いシュートを突き刺した。背番号10の今季8ゴール目で柏が先制点を挙げた。

【動画】浦和戦のハイライトで江坂任のゴラッソをチェック!

 江坂はこの日も出色の働きを見せた。

 浦和のボランチとディフェンスラインの間、あるいはボランチ脇に生じるわずかなスペースを見つけては、そこで味方からパスを引き出し、攻撃に変化を与え続けた。浦和ディフェンスの徹底マークに遭ったオルンガとクリスティアーノが不発に終わったのに対し、江坂は「浦和が自分のことを気にしているかなとは思ったけど、相手が警戒している中でも良い位置でボールを受けられた」と浦和の包囲網を苦にせず、激しいチャージを受けても巧みに体を使って前を向いた。

 その一連のプレーには、ネルシーニョ監督も「任は進化し続けている選手。兼ね備えているパーソナリティーに加えて、今年は戦う勇気を持って毎回ピッチに立ってくれている」と高い評価を与えた。
 
 7月、8月には得点がなく、オルンガへのアシストで存在感を放っていた江坂だが、9月以降はルヴァンカップを含めた公式戦で10ゴールと、コンスタントに得点を重ねている。

「ミカ(オルンガ)が警戒されている分、自分が空いているだけ。昨年からの継続だけど、空いているスペースで受けるという自分のストロングポイントを良い形で出せていることが結果にもつながっている」

 江坂は得点量産の理由をそう語り、自分自身のプレー自体は特に変えていないという。むしろ変わったとすれば、内面の部分か。

 2018年に大宮アルディージャからの加入当初は、具体的な得点数を目標に掲げることもあったが、昨年から「チームを勝たせること」「あいつがいたから勝てたと言われる選手になること」と漠然としながらも、サッカー選手にとっては"チームを勝利に導く"という究極とも思える目標を掲げ、ことあるごとにそれを明言している。

 そして実際に昨年から今年にかけて、江坂は柏にとって絶対的な存在にまで成長を遂げた。中心選手としての自覚と責任感は、彼の進化をさらに促し、今ではプレー面のみならず、神戸戦、浦和戦と2試合連続でゲームキャプテンを務めたことにも象徴されるとおり、チームリーダーとしての責務をも全うする。

 こうした最近の活躍により、江坂を日本代表に推す声は日を追うごとに強まりを見せている。それでも江坂は地に足を着け「チームで結果を残して、代表はその後に付いてくるもの。チームを勝たせるプレーをして、その先に選ばれればいい」とプライオリティーは揺らぐことがない。

 柏では、規格外の力を持ち、今季のJ1で得点ランキングのトップを独走するオルンガが注目を集める。しかしそのオルンガでさえ「任はファンタスティックで化学反応を起こせる選手。FWにとって彼のような選手がいることでプレーがしやすく、私の得点量産にもつながっている」と一目を置く。

 江坂任とは、そういう存在なのだ。

取材・文●鈴木 潤(フリーライター)
 

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