【担当記者コラム|横浜】手痛い敗戦の中でも印象的だった喜田拓也と天野純の逞しい姿

2020年10月08日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

リーダーの喜田、“違い”を作る天野

手痛い敗戦を喫した柏戦だったが、改めて喜田(上)と天野(下)の逞しい姿が見て取れた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[ルヴァン杯準決勝]横浜0-1柏/10月7日/ニッパツ

 2年ぶりのファイナル進出は叶わなかった。ルヴァンカップ準決勝で柏に0-1の完封負け。横浜は相手の3倍以上のシュートを放ちながら、1点も奪えなかった。

 いくつもの決定機をモノにできず、試合後にうなだれるエリキを喜田拓也が慰める。左腕には黄色い腕章が巻かれている。その光景を見て、ふいに2年前のことを思い出した。

 決勝の舞台で湘南に敗れたあの日、表彰式で歓喜にわく相手選手たちを眺めながら、喜田は静かに拍手を送っていた。当時はベンチ入りを果たすも、出場の機会はなかった。取材エリアでは準優勝のメダルに視線を落としながら、「これを見て、悔しさを思い出そうかな」とつぶやいた。

 あれから2年、今ではキャプテンとしてチームをけん引する立場になった。悲しみにうちひしがれるチームメイトに寄り添い、励ます。「僕は、2018年の決勝での悔しさを持ってきて、今日、このピッチに来ました」。本人が一番、悔しかったかもしれないが、その気持ちを押し殺してでも、チームのために率先して行動する。その振る舞いは、まさにリーダーに相応しいものだった。

 たしかな成長を感じさせる選手がもうひとりいた。天野純だ。

 昨夏にベルギー移籍を果たし、今年5月に古巣に復帰。海外での挑戦を経て、プレー面での変化について訊けば「前への意識」と答えた。
 
 その言葉通りのパフォーマンスを、途中出場でピッチに立ったこの柏戦でも存分に披露した。移籍前は、どちらかと言えば中盤で捌き役を担っていたが、「前への意識」を強めているレフティは、より高い位置で果敢に仕掛けて、局面を打開しようとする。

「クロスが単調になっていたイメージがあったので、自分が入ったら、もうひと手間とか、ハーフスペースのところでもう少し"違い"を作りたいな、と。ターンしてドリブルで運んで、運んでからもうひとつ侵入したりとか」

 セーフティな横パスを選択するより、前に、前に突き進もうとする。その試みは高い確率で奏功し、敵陣のニアゾーンを攻略して多くの好機を演出した。

 結果的に、横浜はルヴァンカップのタイトルに手が届かなかったが、手痛い敗戦の中でも今後に期待を抱かせてくれたのが、喜田と天野、ふたりの逞しい姿だった。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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