新生鈴木ジュビロの初陣検証――痛恨の逆転負けも攻守にポジティブな変化

2020年10月06日 高橋のぶこ

パステンポの良化とフレキシブルさの増加

フベロ体制下ではスタメン出場のなかった今野が先発出場。最終ラインの中央で存在感を発揮した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 電撃的な監督交代から3日後に迎えたエコパでの京都戦。16年ぶりに磐田の指揮を執った鈴木政一新監督は、初陣を勝利で飾ることはできなかった。

【PHOTO】磐田1-2京都|新体制の磐田は小川が先制弾も…ウタカの2ゴールで京都が逆転勝利!

 注目された布陣は3-5-2で、2トップは小川航基と中野誠也という組み合わせ。トップ下に山田大記が入り、左に大森晃太郎、右に松本昌也、ボランチは山本康裕と上原力也。3バックは左が伊藤洋輝、右が山本義道、そして、中央には、怪我から復帰していたがフベロ監督の下では先発がなかった今野泰幸が起用された。

 試合は、開始6分に小川航のゴールで先制。その後もペースを握ってゲームを進めるも決定機を決められず、60分に京都のピーター・ウタカのゴールで同点に。アディショナルタイムに再びP・ウタカに決められ、手痛い逆転負け。これで磐田は3連敗。順位をひとつ落とし、昇格圏はさらに遠のいた。

 自分たちの時間に逸機を重ね、最後に逆転を許す――。シナリオの大筋だけを見れば、前節までの敗戦と変わらない。

 しかし、内容的にはポジティブな変化もあった。とくに前半は、完璧な磐田ペース。攻守にアグレッシブで京都を寄せつけない戦いぶりを見せた。

 変化のひとつは、パスのテンポの良さとフレキシブルさが増したこと。相手のプレスが弱かったこともあるが、選手の距離感、バランスが良く、相手選手の間にポジションを取ることで、ボールホルダーに対していくつものパスコースができていた。

「自分たちが自由にピッチ内で考えながらボールを動かせていたので、その点は良かったと思う」(小川航)。

 これまではやや型にはまったパス回しとなり、読まれていたところもあったが、相手にプレスの狙いどころを与えなかった。
そのなかで、縦パスが増えたこともチャンスの『濃度』が上がった要因だろう。

「フベロ監督の時は、なかなか縦パスを入れられない、と感じたところもあった。攻撃のスイッチは縦パスで入るので、絶対に大事。今日はどんどん縦パスをつけて攻撃が活性化されたのではないか。そこもポジティブなところかなと思う」と小川航。自身の先制点も、上原の縦への鋭いパスを受け反転し左足を振り抜いて決めたものだった。

 前線、中盤のプレスのかかりの良さも攻勢を支えた。就任会見で鈴木監督が改善点のひとつに挙げた「数的優位でも突破されてしまう」場面はほとんどなく、相手パスに規制もかかり、後方の選手の予測を楽にした。

「行けるところは行く、行けないのならブロックを作って守備の陣形を整えることをみんなで意識した。やみくもに行かない、というところが一番大きく変わったところだと思う」と小川航が振り返れば、今野も「基本的なことからもう一度やろうということで、行けるときは行くし、行けない時はセットしてコースを限定しながらプレッシャーをかけに行くということを、監督の指示もあり意識した」と語る。

 鈴木監督が、今野を3バックのセンターで起用したのは、「練習を見ているなかで、守備面の判断力が非常に高く、カバーリングも予測に裏付けされたオフのポジショニングもずば抜けていた」から。

「彼らしいプレーでチームを助けてくれた」と新監督に評価された元日本代表を中心とした守備陣も、前への積極的な守備を見せた。

 前線へボールを運べない京都では、2トップのP・ウタカや仙頭啓矢が下がる場面が多かったが、磐田の3バックは彼らが起点となろうとするところにも激しく身体を当てて自由にプレーすることを阻止。

「(P・ウタカ選手は)攻撃に変化を与えられる選手なので、コミュニケーションを取って上手くマークの受け渡しをしながら、誰かひとりはプレスをかけに行こうと。チャレンジ&カバーを意識して、声をかけ合いながらできたと思う」と今野。前に出ていったことでできるスペースのカバーがスムーズにできていたことも改善が感じられた点だ。

 前のプレスが後ろを助け、3バックの安定、守備が整備されつつあることが攻撃面やバランスの良さを支えるという好循環を、前半の磐田は見せていた。

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