【福岡】6連勝のチームを支える“サッカーIQ”の高さ。司令塔の躍動でさらなる快進撃の予感も

2020年09月25日 中倉一志

チームの中心は前寛之。17節の戦列復帰から連戦連勝

文字通り、チームの中心となる活躍を見せる前。復帰とともに福岡も好調だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 群馬戦は難しい試合だった。思い切って自分たちをぶつけてくる群馬に足下を救われる可能性もあった。しかし、ワンチャンスをものにして、ピンチを確実に防いで勝利。連勝を6に伸ばした。「焦れずに自分たちが何をしなければいけないのかを考え、やるべきことをやれたことが良かった。サッカーIQというか、頭の中、考え方というのが、ある程度チームで統一できていた」とは長谷部監督の試合後のコメント。そんなチームの中心に前寛之がいる。

 彼がチームにとってどのような存在であるのかは、見事なまでに数字に表れている。新型コロナの影響でチームを離れた10節からの7試合の成績は1勝2分4敗。しかし、第17節に戦列に復帰すると、今シーズンのベストゲームのひとつに数えられる内容で山口を圧倒。以降、すべての試合に出場し、すべての試合で勝利。現在、6連勝中とチームは波に乗っている。

 その特徴は、長谷部監督が群馬戦の勝因として挙げたサッカーIQの高さにある。ゲームの流れを的確に読み、その状況に応じて何をすべきかを素早く判断すると、巧みなポジショニングから、時にスペースを埋め、時にパスの受け手をマークし、時に鋭いプレッシングからボールを奪取し、相手のチャンスの芽をことごとく摘んでいく。そのいぶし銀とも呼べるプレーには思わずうなり声が出る。

 その能力は攻撃面でも存分に発揮されている。ゆったりしたリズムでボールを動かしながら、相手の隙を見つけるや否や、瞬時にスピードを上げてパスを送り込む。18節・山形戦で決勝ゴールの起点となったサロモンソンへのバスや、延期されていた9節・大宮戦で勝利を呼び込んだアシストは、まさに前寛之の真骨頂。群馬戦でも一瞬の隙を見逃さずに、最終ラインの裏へ走り込む増山朝陽へロングフィード。チームに勝利をもたらすゴールを演出した。

 そんな彼の存在はチームに勇気と積極性を与えている。「気を遣わずにどんどん自分が前に出て行ける。すごく上手くて、すごくやりやすさを感じる」と話すのは松本泰志。遠野大弥は「動いたらボールが出てくる。キャプテンが持ったら必ず動き出すようにしている。キャプテンが戻って来たことによって、守備の部分や攻撃の部分でチームが活性化された」と話す。攻守にわたって、チームとして意図する形が明確になってきたのは、前寛之の存在が、それぞれの特徴を引き出すという相乗効果を生んでいる。

 一時は首位と17、2位と16の勝点差を付けられていたアビスパも、前半戦を終えて上位2チームを視野に捉えるところまで上がって来た。攻守の要と言える前寛之を中心に、ここからアビスパの反撃が始まる。

取材・文●中倉一志

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