神戸、怒涛の4日間から読み解く今後の展望。フィンク監督の電撃退任から三浦新体制誕生まで

2020年09月24日 白井邦彦

三浦淳寛氏の監督就任の経緯は…

前任のフィンク(左)と新任の三浦淳寛監督(右)。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ18節]神戸4-3鳥栖/9月23日(水)/ノエスタ神戸 

【動画】イニエスタのゴラッソも!神戸対鳥栖戦のハイライト

 サガン鳥栖戦では4-3の撃ち合いを制し、8試合ぶりの勝利を手にしたヴィッセル神戸。だが、試合後のリモート会見に現われた酒井高徳は、嬉しさと悔しさを混ぜたような複雑な顔をしていた。3失点への反省もあるが、一番の理由はトルステン・フィンク監督の電撃退任によるものだった。

「今までいろんなチームで監督交代を経験してきた。その都度、選手が残って監督が去るという理不尽な状況に対して、自分はいつもすごく申し訳ない気持ちを持っていました。今回も話を聞いて、またそういった気持ちが出てきました。(自分たちが)パフォーマンスを発揮できなかったからこういう事態になってしまったという、申し訳ない気持ちが強いです」

 このコメントから察すると、フィンク監督の退任は成績不振が原因のように思われる。だが、9月24日に行なわれた新体制発表会見に出席した立花陽三社長は、成績云々が退任理由ではないと明言している。フロントと選手たちの間に齟齬があったなかで、鳥栖戦は行なわれたということかもしれない。
 
 この電撃退任を、新体制会見を基に時系列で追うとこうなる。

●9月21日(月)にフィンク監督が退任を申し出た。その後クラブでミーティングを行ない、ひとまず22日(火)と23日(水)の2日間はアシスタントコーチのマルコス・ビベス氏が暫定的に指揮を執ることになった。それと並行して、リストアップされた次期監督候補の中から、スポーツダイレクターの三浦淳寛氏に新監督の就任を打診。一旦、保留の形となる。

●9月22日(火)にフィンク監督の退任が正式に発表される。

●9月23日(水)。鳥栖と戦い、今季ホーム2勝目を挙げる。試合後に三浦氏から監督就任の承諾を得る。

●9月24日(木)の練習から三浦監督が指揮を執り、練習前には選手たちへ挨拶を行なった。その後、12時前に新体制発表がリモート会見の形で行なわれた。

 立花社長は会見で、スポーツダイレクターの三浦淳寛氏に白羽の矢を立てた理由をこう説明する。

「新監督を選ぶ中で、まずスタイルを継続できる人というのが前提としてありました。三浦さんは、2018年にスポーツダイレクターとして神戸に来て、ポゼッションサッカーを神戸に持ち込んだ人です。またシーズン途中での交代を考慮し、すでに選手たちの特性を知っている三浦さんが適任だと判断しました」

 2018年以降にポゼッションサッカーへと大きく舵を切った神戸。その一部始終を知る三浦氏の新監督就任は、これ以上ない理にかなった人事と言える。チームが大崩れする心配も少なく、スムーズに新体制へ移行できるはずだ。

 強いて不安材料を挙げるなら、三浦氏に監督経験がないこと。アンドレス・イニエスタやトーマス・フェルマーレンらスター選手たちと同じ絵を描き、うまく共存できるかが今後のポイントになるのかもしれない。

 鳥栖戦で見せた高い攻撃力を維持しながら、課題の失点を減らすアプローチをするのか、それともバルセロナのようにポゼッションをとことん追求するのか。新監督の手腕に注目したい。

取材・文●白井邦彦(フリーライター)
 

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