【識者の視点】久保建英の台頭は森保ジャパンの序列を引っ掻き回すトリガーになる

2020年09月13日 清水英斗

久保を真ん中に置き、両サイドに背後を取れる南野、伊東の並びも面白い

清水氏が考える日本代表の現時点でのベストメンバー。

 10月にオランダで国際親善試合を行なうことが発表された日本代表だが、いまやそのメンバーを語るうえで外せない存在となっているのが久保建英だろう。欧州各国のビッグクラブが熱視線を送る19歳を、日本代表ではいかに活用すべきなのか――。現時点のベストメンバーの中で久保が担うべき役割について、識者に見解を伺った。

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清水英斗氏(サッカーライター)

 久保は中央で起用するのがベストだろう。彼の最も大きな特長はプレーのリズムだ。ボールタッチや動きのビート(拍子)が早く、その早さの中でも正確にプレーできる。それは敵に囲まれてこそ生きる能力であり、基本的には中央でプレーさせたいところ。

 だが、問題は日本代表のシステムにどうフィットさせるかだ。日本の1トップは典型的な9番ではなく、ライン間でのプレーが得意な9.5番系の大迫勇也だ。だからこそ、飛び出しに長けた南野拓実との2トップがハマっていたわけだが、その現状の枠組みで久保をトップ下に置くと、大迫とプレースペースが重なり、背後への力が減る恐れはある。

 あるいは久保は左利きなので、右サイドハーフに入れて、中寄りにプレーさせることも考えられる。しかし、これも今の枠組みでは難しいだろう。これまでの森保ジャパンは、右サイドハーフの堂安律がバランスの調整役だった。日本が攻め込まれた場面では、堂安が深い位置へ下がり、DFや中盤の守備を助けることが多かった。一方、逆サイドの中島翔哉はカウンターの充電をするため、味方DFと並ぶほど下がるシーンは少ない。この中島と堂安の非対称性が攻守のバランスを保ってきたわけで、この枠組みのまま、左サイドに中島、右サイドに久保というわけにはいかない。守備に引っ張られるなら、久保を入れる意味はない。逆に久保を右サイド起用するなら、反対サイドは中島よりも原口元気のようなハードワーカーに変更して、攻守のバランスを調整する手もある。久保のサイド起用は、堂安とのポジション争いのようで、実は中島とのタスク争いとも言える。

 一方、このような枠組みごと大きく変えるなら、南野を左サイドへ写し、南野、久保、伊東の並びも面白いのではないか。大迫と南野の2トップは確かに相性が良いが、2019年アジアカップのように、彼らが2人の関係だけで背後を取れてしまうケースは、今後の最終予選には無いと考えたほうがいい。そこで久保という、攻撃にもうひと手間の魔法をかける選手をトップ下に置く。そして、大迫と久保が真ん中で受け手になる分、両サイドは背後を取ることに長けた選手を置く。その際、伊東はできるだけタッチライン際でプレーさせたいので、ハーフスペースへ遠藤が出てサポートするイメージにした。このような組み合わせも、ぜひ試してほしい。

 いずれにせよ久保の台頭は、ある程度固まってきた森保ジャパンの序列を引っ掻き回すトリガーになる。組織をブレイクスルーさせる上では、必要なことだ。
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