【柏】エースは俺だ!――工藤壮人が2ゴールで存在感を示す

2015年03月04日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「常にCFで勝負したいと思っている」

試合終盤には大谷秀和から託されたキャプテンマークを巻いてプレー。ビン・ズオン戦のマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

「工藤が決めると雰囲気が変わる」。かねてからチームメイトたちがエースの一撃の重みを認めるように、ビン・ズオン戦でも柏の"勝利の方程式"が見事に決まった。
 
 この日は、過去2戦で任された右ウイングではなく、センターフォワード(CF)で出場。試合当日、吉田監督から「今日はストライカーのポジションで行く」と告げられたという。常々「CFで勝負したい気持ちはいつも持っている」と話す工藤が、この千載一遇のチャンスに奮い立たないわけがない。
 
「レアンドロに代えて僕を使ってくれた監督の気持ちに応えたかったし、『点を取れ』とも言われたので、どうしてもゴールという結果が欲しかった」
 
 今季トップチームが採用する4-3-3の1トップは、アカデミー時代に慣れ親しんだ主戦場である。前線で受けてボールを引き出し、ボランチにはたいて、ゴール前に入っていく――。工藤は当時と同じシンプルなプレーを心掛けた。
 
 ボールを支配し、何度も相手ゴールに迫りながら得点を奪えず、嫌な空気が流れ始めた42分、工藤は右サイドを突破したクリスティアーノの横パスに反応。「絶対にチャンスは来ると思っていた」と中央に走り込むと、ゴール右隅に先制弾を流し込み、ゴールラッシュの口火を切る。67分には、大津がニアでCKをそらしたボールを頭で押し込み、この日2点目。工藤自身が「得意な形」を話すように、泥臭く、そしてそつなく、訪れたチャンスをものにした。
 
 公式戦での1トップ出場は昨年9月の浦和戦以来、なおかつゴールとなると同5月の鹿島戦まで遡る。ユース時代に苦楽をともにした太田は「アイツも本来あのポジション(1トップ)でやりたいだろうし、活き活きとしてやっていた」と振り返る。昨季は戦術上、守備的なタスクが多く、ストライカーとしての本能との狭間で葛藤していただけに、なおさら"水を得た魚"のように見えた。
 
「ウチにはレアンドロという素晴らしいCFがいますけど、そこで監督が誰をCFで使うか、誰を3トップで使うか、またひとつ悩みを増やせたのは良かったのかなと思う」
 
 試合後、笑顔でそう語った工藤だが、その目はすでに前に向いている。
 
「『ゴール』と『攻撃の活性化』という点では手応えがあったし、僕自身やっていて楽しかった。今のチームには、犠牲の精神が浸透してきている。犠牲になった選手のためにも、僕が最後決め切らないといけない。とはいえ、チームとしての完成度はまだまだ。その中で、チームの成長とともに僕自身も成長していきたい」
 
 頼れるエースの復調は、ACLでの日本勢初勝利以上に、チームにとって価値のあるものだった。
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