【川崎】快進撃の舞台裏。鬼木達監督&主将の谷口彰悟に訊いた強さの理由

2020年08月17日 本田健介(サッカーダイジェスト)

チームに慢心はなし

9連勝を達成した川崎。圧巻の強さを見せ、首位を快走している。(C)SOCCER DIGEST

 快進撃が止まらない。今季、新システム4-3-3を導入し、昨季3連覇を逃したリーグタイトル奪還を目指す川崎は、第10節、アウェーでの札幌戦を6-1で制し、J1の連勝記録(1シーズンでの記録。1997年、2018年にG大阪が、2007年に鹿島が達成)の9連勝に並んだ。

 29ゴール・7失点という成績は実に見事で、持ち前のポゼッションをベースにしつつ、速攻と遅攻を使い分け、3トップを活かした幅を持たせた崩しと、攻撃のレパートリーはまさに多彩だ。破壊力を増した攻撃はチームを象徴する魅力であり、さらに攻守の切り替えの速さも例年以上に増し、守備の強度も向上。相手を敵陣に押し込むワンサイドゲームを可能にしている。

 そこで札幌戦の数日前、鬼木達監督と今季からキャプテンに就任した谷口彰悟にオンラインで好調の理由を訊ける機会があった。その回答は実に興味深いものだった。

 まず谷口が強調したのは常に向上心を失わないチームの雰囲気である。

「勝ちながら進められているのは良いことですし、素晴らしい雰囲気でトレーニングができています。その練習の効果も出ていると感じますね。ただ勝っているからすべて満足しているのかというと、そうではありませんし、もっとできるよねという空気、そういうコミュニケーションを常に取っています。だから正直、満足はしていません。

 より圧倒して勝てるように、そういう姿勢は全員が持っています。そういうことを含めて結果を出せているのかなと、結果を残せている要因のひとつかなと感じています」

 慢心がないチームだからこそ、一つひとつの試合に全力で臨み、連勝街道をひた走ることができる。高い意識、貪欲さは所属歴が浅い若手にも波及しており、現に大卒ルーキーの三笘薫、旗手怜央らもプロ1年目に関わらず、堂々のパフォーマンスを見せている。それは脈々と築いてきたクラブのアイデンティティの賜物とも言えるだろう。
 
 今季の破竹の勢いを受けて、最近では憎いほどの強さを誇ってきた過去のJクラブ同様に、歴史に名を残すチームになるのではないかという声も大きくなってきた。それでも鬼木監督も、周囲の評価に感謝しつつ、チームの現状を冷静に捉える。

「過去のチームとの比べ方は難しいと思いますし、当然自分も現役のころからやっていて、強いなと思うチームは一杯見てきました。比較できないというのは正直なところです。

 ただチームを預かっている身としては、やっぱりこのチームは他にない強さがあるなと感じています。試合結果だけでなく、やってやろうとか、上手くなってやろうとか、それが非常に強いので、そういうパワーがゲームにも反映されているんだなと感じています。

 そういう意味では若い選手も想いが強いですし、色んなところでパワーになっている。ベテランの選手や長年いる選手もシステムが変わり、新たなことにチャレンジしているという意味で、そういうパワーも出ているなと感じます。そういうものを続けていければ、より強いチームに変わっていけるのかなと感じます。ただ、まだ発展途上だとは思いますね」

 チームは進化の過程。まだまだ伸びしろがあるということだ。8月19日のホームでのC大阪戦で、リーグ新記録を達成できるか注目だが、それよりもシーズンが進むなかでどんな強さを身に付けるのか、さらに磨きのかかったパフォーマンスを大いに楽しみにしたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

 
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