「この車は盗んだのか?って…」「こないだも電車で」イングランド代表戦士が明かす差別の“リアルな実情”

2020年08月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

「物事が変わるのを諦めかけている」

イングランド代表DFローズが、サッカー界に蔓延っている人種差別の問題を改めて訴えた。 (C) Getty Images

 新型コロナウイルスによるリーグ中断や打ち切りなど、様々なトピックが話題となった2019-20シーズンで、これまで以上に物議を醸したのが人種差別だ。

 今年5月にアメリカ中西部ミネソタ州で、黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、サッカー界でも差別の実情に怒りや嘆きを世に訴える選手が続々と現われ、問題の根深さが改めて浮き彫りになった。

 そうしたなかで、差別の実情を訴え続けているのが、ニューカッスル・ユナイテッドに所属するイングランド代表DFダニー・ローズだ。2006年にリーズ・ユナイテッドでデビューを飾って以来、プレミアの舞台で活躍してきた30歳は、今も"被害"を受け続けているという。

 現地時間8月3日には、アイルランド・メディア『Second Captains』のポッドキャスト番組で、「俺が18歳の頃から(差別は)日常的にある」と痛切に訴えた。

「先週も俺は警官に呼び止められたよ。地元のドンカスターに戻る度に起こることだよ。『この車は盗んだのか?』『どこで手に入れたんだ?』に始まって、『お前はここで何してる?』『この車は購入したと証明できるか?』とまで聞かれる。毎回こんな感じだ。それは運転を始めた18歳からずっとだ。毎回、自分は笑うだけだ。次に起こることは分かっているからね」

「そういうものだ」と呆れかえりながら話すローズは、さらに電車での実体験も告白した。
 
「最近も電車に乗ったときに、車掌から『ここが一等車なの知ってます?』と言われたんだ。それに俺は『あぁ知ってるよ。だから何だい?』って言い返した。チケットまでも見せたよ。これは本当の話だが、彼女(車掌)は俺の後に乗ってきた2人の白人には何も聞かなかったんだ。

 それを見て思わず、『俺は聞かれた。彼らのチケットは確認しないのか?』と言ったら、『いいえ、その必要はありません』と告げられた。一般的にありえることと思うかもしれないが、俺からすれば人種差別だ」

 リアルな差別の事情を訴えるローズだが、SNSなどで「プレミアリーガーで金があるんだからごねるな」と中傷されることも日常茶飯事で、「物事が変わることに諦めかけているよ」とも嘆いている。

「いま起こっていることを、誰もが目と耳と心で捉えて、しっかりと考えてほしい。僕らには耐えることしかできない。うまくいけば、世界で差別は消えて、平等なものになっていくと思う」

 サッカー界でも幾人ものスターたちが改善を訴え続けている人種差別問題。果たして、この現状が改められる日は訪れるのだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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