本田はこのままでは「試合を決める選手」から「試合を終わらせる選手」へ……

2015年02月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

覚悟のチェゼーナ戦で完封勝利のミラン。そのなかで本田は…。

中盤が機能し、新加入選手も良いプレーを披露、メネーズのドリブルは効果的で、パッツィーニは初ゴールと、ポジティブな要素が多かったチェゼーナ戦。ボナベントゥーラもトップ下の適性を十分に示した。 (C) Getty Images

 セリエA第24節でミランはチェゼーナを2-0で下し、21節パルマ戦以来3試合ぶりの勝利、そして15節ナポリ戦(2-0)以来の完封勝利を収めた。
 
 下位に沈みながらも最近は好調だったチェゼーナ相手に、前節エンポリ戦同様の苦しい試合が展開されるかと思われたが、ミランは開始直後から積極的に仕掛け、またチェゼーナのプレッシャーが予想より緩かったこともあり、互角以上の内容を見せた。
 
 攻撃の連係とアイデアではアウェーチームに分があったものの、ミランは中盤の守備がこれまでになく機能し、良い位置でボールを奪うことができたため、攻撃陣も前を向いてプレーできる機会が多く、チャンスを量産することができた。
 
 開始1分のアンドレア・ポーリのゴールはオフサイドと判定されてしまったが、22分にリッカルド・モントリーボが自ら失ったボールを必死のチェイスで取り返し、これがジェレミー・メネーズ→ジャコモ・ボナベントゥーラと繋がり、地を這うミドルで先制ゴールが決まった。
 
 やや押され始めた時の先制ゴール、前半ロスタイムで相手のボレーシュートを弾き出したGKクリスティアン・アッビアーティのスーパーセーブ、そして終了間際にFKからルカ・アントネッリが倒されて得たPK(ジャンパオロ・パッツィーニが決めて今シーズン初ゴール)……重要な場面はミランにとって好都合な時間帯に訪れた。
 
 サン・シーロが大ブーイングに包まれたエンポリ戦から1週間後、相当な覚悟を持って選手が臨んだからか、結果はもちろん、内容面でも満足のいく90分間を過ごせたミラン。見る側も同様で、(凡ミスはいくつかあったにもかかわらず)スタンドからブーイングはほとんど聞かれなかった。
 
 相手の速攻や急な動きに対する守備の対応の遅れ、ゴール前での攻撃のアイデア不足など、結果に直接関わる部分での課題は存在するが、チェゼーナ戦での4-3-1-2のミランは、バランスが取れており、中盤戦以降、少なくとも今年に入ってからは、最も希望と期待を抱ける陣容と試合内容だった。
 
 さて、この試合で出場機会のなかった本田圭佑。どの試合でも献身的な動きとキープ力は評価を受けているものの、最近は背番号10に求められるプレーが全く見られず、ついにスタメンから外されることとなった。
 
 戦前は、トップ下に本田とボナベントゥーラのいずれが起用されるかが注目されたが、フィリッポ・インザーギ監督は後者を選んだ。そしてその選択は、このところ打つ手の全てが裏目に出ていた若き指揮官にとって、久々の正解となった。
 
 ボナベントゥーラにあって本田にないもの、それは決定的な働きだ。先制の場面だけでなく、52分にもポストに当たるシュートを放ったし、多くの場面でポジショニングの良さも見られた。また、守備も精力的にこなし、その活動範囲は時として本田よりもずっと広かった。
 
 ラストパスも幾度か出したボナベントゥーラ。精度やタイミングでは本田に及ばないものの、決定的な仕事いうことでは、ここ数試合の本田を上回っている。思えば、かなりの距離から迷わずGKの頭を越す鮮やかなミドルを決めた9節のカリアリ戦あたりから、目に見える貢献度ではこの背番号28の方が10番らしいプレーを見せている。
 
 本田がインザーギ監督の信頼を失ったということはない。相変わらず評価は得ているが、勝利が必須のチーム事情のなかで、メンバーから外されたという現実はなかなか厳しいものがある。4-3-3ならともかく、4-3-1-2が継続されるとなれば、本田が入り込むのは簡単ではないだろう(怪我人や極端に調子を落とす選手が出なければ、だが)。
 
 とはいえ、おそらく本田に出場機会は今後も確実に訪れるはずだ。その時、できるだけ早いうちにボナベントゥーラとの違い、優位点を示さなければならない(もちろんライバルはボナベントゥーラだけではないが)。
 
 さもなければ、序盤戦は「試合を決める選手」だった本田は、今度、その献身的な動きだけを買われて、後半途中に「試合を終わらせる選手」としてピッチに送り出されることになるかもしれない。もちろんその場合でも、真のプロフェッショナルである本田は、その役割を受け入れ、黙々とこなすのだろうが……。
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