【磐田】小林、上田のホットラインを開通したい

2015年02月13日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

小林がスペースを突いた時にビッグチャンスが到来。駒野&太田の「二枚刃」サイドアタックも魅力。

試合終了間際にドリブルで持ち込んで得点を挙げた小林。上田とともにチームのキーマンとして、彼がいかに自由にプレーできるかが勝敗を左右しそうだ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 磐田は2月11日、「スカパー! ニューイヤーカップ」で浦和と対戦。87分に小林がゴールを奪ったものの、1-3で敗れた。この試合から見えた収穫と課題とは――。
 
「よくなかったと思う」(森島)
「試合のなかで、なかなか修正できなかった」(上田)
 
 試合後の選手たちの表情は一様に沈みがちで、こぼれるのは反省の弁ばかりだった。
 
 連日の練習で身体を徹底的に追い込み、疲労はピークに達していた。移動の負担もあったはずだ。それでも決してベスト布陣とは言えない浦和に対し、チャンスと言えるチャンスをほとんど作れなかった。
 
 布陣をコンパクトにまとめ、高い位置からプレスをかける。ボールを持ったら、サイドを起点にしつつ、中央の小林や森島を活かしながら攻略する――。というチームとしての意図は感じられた。
 
 磐田の最大のキーマンが、小林であることは明白だった。可能性が感じられたのが、30分の場面だ。
 
 速攻から右サイドを使って切れ込み、森島が最終ラインをグッと押し下げる。FWとボランチの間にできたスペース(ギャップ)に上手く入り込んだ小林が、フリーになってパスを受ける。すると、慌てて浦和の守備陣が対応に出てきたところをフリーになった最前線の森島へパス。森島のシュートは枠を外れたが、1点もののビッグチャンスを作り出すことに成功した。
 
 試合終了間際には、その小林が相手の連係ミスを突き、自らドリブルで持ち込み虎の子の1点をもぎ取っている。
 
 前線のすべての選手が自らの個性を出そうと躍起になり、逆にバラバラになってしまっている印象を受けた。ただ、間違いなくトップ下の小林がボールを受ける回数が多ければ多いほど、チャンスは増える。彼がいかに自由(フリー)を確保し、そこでボールを受けてタメを作ることができるか。そのあたりが今後の課題になりそうだ。
 
 また、6年ぶりに復帰したMF太田とSB駒野による右サイドからの崩しも、今季の磐田の武器になるだろう。この試合では押し込まれる展開が続いたため、駒野の攻撃参加は限られた。しかし、まさに「二枚刃」となって縦に切り裂くアタックは見応えも十分で、今後より脅威を増していきそうな可能性が感じられた。
 
 惜しむらくは、ふたりで崩してもクロスがFWと合わなかったり、ゴール前に飛び込んでいる人数が少なかったり、「クロス後」の狙いもやや曖昧に見受けられた点だ。クロスがなかなか味方に通らず、太田が首を捻る場面も見られた。
 
 試合中、名波監督はしきりに、シュートでプレーを終わらせること、ゴールに向かう意識を持つことを選手に強調していた。前線の様々な選手をテストしている段階のようだが、最後のフィニッシュに至る道筋はもう少し整備したい。
 
 本来ゲームメーカーになるべきボランチの上田は、そのあたりの課題を認識していた。上田は言う。
 
「もっと縦パスを入れながら時間を作る。縦を意識して、そこから横を突く。そのためにも、自分のところで、もっとどっしりとボールを受けられるようにしたい」
 
 サイドを活かすにも、トップ下を活かすにも、この古巣に5年ぶりに復帰したレフティが鍵を握る。小林―上田の縦のラインが、磐田のホットラインとなり、生命線となり、代名詞となる――。そんなシーズンになっていけば、自ずとJ1昇格圏は見えてくるはずだ。
 
「勝たないと面白くない。内容とともに、結果を求めたい」
 
 伊野波はそう誓っていた。
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