ミスを気にするあまりに“ビッグチャンス”を――英国人記者は南野拓実の再開戦をどう見た?【現地発】

2020年06月22日 スティーブ・マッケンジー

自分を示す絶好の機会だったが…

エバートン戦で奮闘しながらも目に見える結果を残せなかった南野を現地の英国人記者はどう見たのだろうか。 (C) Getty Images

 リバプールに所属する南野拓実が、現地時間6月21日に開催されたエバートンとの「マージーサイドダービー」でプレミアリーグ初先発を飾った。

 新型コロナウイルスの影響によって長らく中断していたプレミアリーグ。そのリスタートとなる重要な一戦で、南野が打撲の影響から調子を落としていたモハメド・サラーの代役として先発の一角に名を連ねたのは、再開までの準備段階で調整能力を発揮した本人の努力の賜物だろう。ユルゲン・クロップは、そうした小さな働きも見逃さない監督だ。

 南野にとっては、2度目の「マージーサイドダービー」。その立ち上がりは上々だった。積極的にボールに絡むと、9分にはナビ・ケイタとのコンビネーションから惜しいミドルシュートを放つなど、リバプールが主導権を握った約20分間、彼はとても躍動感に溢れたプレーを見せたように私の目には移った。

 絶対的エースでもあるサラーがベンチスタートとなったこの試合は、南野にとっては、何ができるかを周囲に示す絶好の機会だった。それだけに立ち上がりの躍動は、その先のプレーに対する期待を膨らませた。

 だが、結果として南野は自身に舞い込んだチャンスを活かせなかった。
 
 ハーフタイムにアレックス・チェンバレンと交代させたクロップは、試合後に「タキ(南野の愛称)は決して悪くはなかったし、前半で交代させることはパフォーマンスとは無関係だ」と説いたが、前半途中からの彼からは、アグレッシブさを感じられなかった。

 指揮官の言う通り、南野は悪いパフォーマンスをしていたわけではない。だが、全体的に見れば、これまであまり任されてこなかった右ウイングでのプレーを求められたせいか、次第に尻すぼみしていき、リスクを冒すよりもセーフティーな選択をしているように見えた。

 サラーのような絶対的なゲームチェンジャーから定位置を奪うには、多少のリスクを冒したプレーも必要となるが、南野はミスを気にするあまり縮こまっている印象を受けた。

 周知の通り、リバプールは現在、約30年ぶりのトップリーグ制覇を目前にしている。クラブを愛する人間の悲願をできるだけ早く達成するうえでは、今回の南野のようにアクシデントから与えられたチャンスを活かし、ヒーローとなる選手が必須だ。それだけに今節の日本代表FWのパフォーマンスには、いささか物足りなさを感じてしまった。

 今後、チームがプレミアリーグ制覇に邁進していくなかで、南野も少なからず出場機会を得られるだろう。しかし、何よりも重要なエバートン戦だっただけに、彼はビッグチャンスを逃したと言えるだろう。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。

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