「MFルーニー」はあるべき姿なのか?【マンU番記者】が抱く違和感と疑問

2015年02月12日 マーク・オグデン

CFとして先発したのはわずか4試合。

ルーニーの中盤起用には賛否両論。オグデン記者は「違和感」という表現で、ファン・ハール監督の用兵に疑問を投げる。 (C) Getty Images

 はたして、これがウェイン・ルーニーのあるべき姿なのか──。
 
 2月8日のウェストハム戦。試合終了間際にダレイ・ブリントが同点ゴールを叩き込み、マンチェスター・ユナイテッドは辛うじて敗戦を免れた。低調な戦いぶりには当然ながら失望したが、4-3-1-2の右インサイドハーフとして守備に追われるルーニーの姿にも、私は違和感を覚えずにはいられなかった。
 
「名門再建」を託されたルイス・ファン・ハール監督は、4-3-1-2や3-4-1-2、4-2-3-1など複数のフォーメーションを使い分けながら、再建という難事業に挑んでいる。対戦相手の特性や試合展開に応じて戦い方を自在に変えられるチームが、ファン・ハールの理想とするところだ。
 
 しかし、みずからが率いてブラジル・ワールドカップの3位に導いたオランダ代表のような機能性の高いチームの完成は、まだまだ遠い。「選手の脳を鍛える必要がある」との指揮官の言葉からも、一筋縄ではいかない難しさがうかがえる。
 
 そして、ルーニーである。
 
 在籍11年目を迎えたチームの象徴が、ここまで本来のCFとして先発したのはわずか4試合。ほとんどがセントラルMFやインサイドハーフで起用されているのだ。
 
 中盤で汗をかくルーニーは、25節を終えたプレミアリーグで8得点。12月26日のニューカッスル戦(18節)を最後にノーゴールが続く。
 
 敵を執拗に追いかけ、タックルを仕掛けるその姿は勇ましく、チームを奮い立たせる。ただ、同時に疑問を投げかけるのだ。これがルーニーの正しい起用法なのかと──。
 
 ファン・ハールによれば、ルーニー本人は中盤での起用に不満はないという。63歳の策士は語る。
「ポジションについて、ウェインから不満の声は聞かない。ボールに多く触れられるという理由で、中盤は気に入っているようだ。常々ウェインにはこう言っている。『インサイドハーフに入った時の君は、チームへの貢献度が極めて高い』と。彼ほど多くのポジションをこなせる選手はいない」
 
 ファン・ハールの見解は一理ある。戦術理解力が高く、献身的で、運動量が豊富なルーニーは、十分以上に中盤で機能する。
 
 ただその一方で、鋭い嗅覚と優れた得点力という美点は、中盤では最大限に活かせない。イングランドが生んだ至宝──。ルーニーが名を馳せたのは、「ストライカー」としてだ。
 
 ユナイテッドでルーニーが挙げた得点は224。すでに歴代3位で、ボビー・チャールトンの最多記録「249」にあと25ゴールと迫っている。点取り屋としての能力は数字が雄弁に語っているはずだが、そんなルーニーの居場所が前線にない。
 
 しかも、ファン・ハールがこだわるラダメル・ファルカオとロビン・ファン・ペルシの2トップは、お世辞にも機能しているとは言い難い。ともにペナルティエリア内で勝負する2人は動きが被り、機能しないばかりか前線を硬直させるという弊害をもたらしている。にもかかわらず、ルーニーは中盤に置かれたままだ。
 
 ルーニーが中盤で起用されるのは、これが初めてではない。アレックス・ファーガソン監督時代に何度かあり、本人が不満をぶちまけたことがあった。
 
「俺はフォワード。本来と違うポジションで使われて落胆している」
 そう語ったのは、2年半前だ。「年をとったら中盤でプレーするかもしれないけど」とも話していたが、29歳はまだまだ老け込む年ではない。
 
 前述のウェストハム戦で、ルーニーがペナルティエリア内でボールを触る機会は一度もなかった。エリア内でのタッチ数がゼロ……。
 
 ファン・ハールはルーニーをCFに戻す可能性を否定してはいない。ただ、ストライカーとしてネットを揺らしつづけたルーニーの姿が、このままでは過去の記憶に変わってしまう。
 
【記者】
Marc OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン元監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔
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