【名古屋】リーグ再開への大きな発見!岐阜との練習試合で稲垣祥が示した興味深いパフォーマンス

2020年06月21日 今井雄一朗

ボランチの相棒によって立ち位置を変え…

今季から名古屋に加入したボランチの稲垣。新天地でも力を発揮している。(C)SOCCER DIGEST

 6月20日、名古屋はJ3の岐阜との練習試合(45分×3本)を行ない、2本目の終了間際に阿部浩之がPKを決め、トータルスコア1-0で競り勝った。この一戦で光ったのは背番号15の働きだった。

 もちろん知っていたが、頼もしい男になってきた。新型コロナウイルスの影響での中断を受け、約3か月ぶりの実戦となる岐阜との練習試合で、以前にも増して持ち味を発揮したのがボランチの稲垣祥だ。

 この日は4-2-3-1のシステムで、J・シミッチと中盤の底でコンビを組んで先発し、2本目の途中からは相棒を米本拓司に変え、3本目の途中まで102分間プレーした。試合後には「しんどかったけど、ピッチに立てる幸せを感じました」と柔和な笑顔を見せる。

 守備力と運動量、中盤のバランス取りとコーチング。これまで名古屋で稲垣が見せてきた特長は、典型的な"第2ボランチ"といったものだった。強力なミドルシュートを誇り、ゴール前に絡む動きも見せたいとは語っていたが、新加入であること、そしてチームとして縦に速い攻撃が増えたこともあり、周囲をフォローする動きが、彼の選択肢の最上位になっていたところがある。

 しかし今回の練習試合は、ボールを握ってプレーする時間帯がほとんどで、それゆえに中盤の選手には守備以上に攻撃面での貢献が求められる展開になった。
 
「もちろん、元々、僕が得意としている形というのがありますし、周りの選手もそこを見てくれていること、そのスペースを空けてくれていることもあったと思います。周りの選手がしっかり見てくれていて、そこに僕のストロングポイントが重なったということです。ああいったシーンも決め切れるようにしないといけないなと思いますが」

 得意な形とは、3列目からゴール前に飛び込んでいくペネトレーションだ。岐阜戦では1本目の33分と、2本目の13分に、左右で同じような形から惜しいシュートを放っている。それはいずれも中盤からサイドへのフィードで作った大きな展開で、1本目は阿部から右の前田直輝へ渡った後の、2本目はJ・シミッチから左の阿部に渡った後のシンプルな折り返しに走り込んだ。

 チャンスを見極め、長い距離を走ってフィニッシャーになる動きは、相手にとっては厄介なものだ。「相手が引いた時にアタッキングサードの(崩しの)イメージをどういう形で共有できるか」を課題に挙げた稲垣だが、彼が見せたプレーそのものが解決策のひとつでもあった。

 岐阜戦での稲垣はボランチとしての順応性も見せ、最初は低めの位置でゲームメイクをするJ・シミッチの動きを活かすために前目のプレーエリアを選択し、相棒が米本に代わると、よりふたりのバランスを重視して前線を活かした。

「コンディションが上がり切っていないので、細かいポジション修正などでは、外から見ているよりも『ちょっと危ないな』というのはあった」と、課題を口にするも、全体的に多かったミスをカバーするべく身体を張っていたのは彼だった。守備でも、攻撃でも、そのインテンシティの高さを活かせるセントラルMFとしての特性を稲垣が出し始めたことは、急ピッチで調整を続ける名古屋にとっては"援軍"にも思える発見だったはずだ。

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)

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