【柴崎岳/この一枚】伝統の“10番”を背負い、世界への扉を開いた2016年

2020年06月14日 徳原隆元

背番号10番に相応しいチームのコンダクター

2016年シーズン、待望の初ゴールは6節のホーム広島戦。カイオのクロスにヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。写真:徳原隆元

 2016年4月10日、J1リーグ第6節の鹿島アントラーズ対サンフレッチェ広島戦。1-1で迎えた57分、鹿島のMF柴崎岳が、前年王者の広島からヘディングシュートでゴールを奪う。

 自身のシーズン初ゴールに歓喜する若き司令塔。得点後は、クールな柴崎にしては珍しく感情を高ぶらせ、その喜びを多くのサポーターたちに伝えるかのようにスタンドに向かって走り出す。チームの得点に沸く遠藤康とともに、望遠レンズで捉えた彼らは、みるみるうちにファインダーの中で大きくなっていく。

 柴崎は、今度は土居聖真の祝福を受ける。望遠レンズから広角レンズを装着したカメラに持ち替え、ふたりに向けてシャッターを切る。プレー中の選手たちがこれほど近くに来ることは稀で、圧倒的な距離で撮影できたのが、この1枚だ。

 2016年シーズンから柴崎は日本人としてはテクニシャンで鳴らした本山雅志に続いてふたり目となる、鹿島の10番を受け継いでいた。エースナンバーを託された柴崎の魅力は、なんと言っても精度の高いパスによるゲームメイキングだ。ボランチ、あるいはサイドハーフのポジションで、試合の流れを的確に読み、インサイドキックを多用した相手の急所を突く正確なパスでゴールを演出する。まさに背番号10番に相応しいチームのコンダクターだ。

 抜群のパスセンスを最大の武器としていた柴崎だが、彼の活躍はゲームメーカーとしての役割に留まることなく、大舞台で挙げたゴールシーンも人々の記憶に刻まれているのではないだろうか。

 2012年のナビスコカップ決勝では、チームを優勝へと導く2得点を挙げている。そして広島戦から重ねられた2016年のゴール記録は、12月に開催されたクラブワールドカップの決勝戦で締め括られる。試合は2-4で敗れたが、柴崎はレアル・マドリーを相手に2ゴールをマークし、その存在を世界へと知らしめた。
 
 そして、翌年にはスペインのテネリフェへの移籍を果たすことになる。2016年は柴崎にとって世界に挑戦する扉を開いたシーズンとなったのだった。

 チームの心臓部となる中盤で鹿島を牽引し、大事な場面ではゴールまで決める。そのプレースタイルは鹿島をJリーグ屈指の常勝軍団へと作り上げた、このチームで最初に10番を付けたブラジル人選手に合致するのではないだろうか。

 そう、柴崎はジーコの後継者と呼ぶに相応しいクラッキ(名手)だった。

取材・文・写真●徳原隆元

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