「あの時、ふてくされた態度を取っていたら…」経験豊富な指導者から何を学ぶ? 中村俊輔の貪欲な探求心

2020年05月10日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「スコアは7-0だったけど、『出たい』と志願した」

サッカーのあらゆる事象について、俊輔は選手としてはもちろん、指導者目線でも思考を巡らせることもある。写真:滝川敏之

 今はまだ現役への強いこだわりを見せる中村俊輔だが、引退後はおそらく、指導者の道に進むはずだ。「こういう場合に、自分が監督になれた時には……」というフレーズは、これまでの取材で何度か聞いてきた。

 実際のピッチ上での戦いやチーム作りなど、サッカーにおけるあらゆる事象について、選手としての振る舞いを最優先に考えるが、別のフィルターを通して思考を巡らせることも。そんな俊輔は多くの監督の下、何を学んできているのか。過去の発言を厳選して紹介する。

■岡田武史(日本代表時代)■
「選手を乗せるのが上手かった。ボンバー(中澤佑二)に対しても、持ち味のヘディングや思い切り飛ばすクリアをどんどんやれ、と。そうするとボンバーも段々ノッてきて、練習でも見せたことのないボール捌きを試合で見せたりする」

■ゴードン・ストラカン(セルティック時代)■
「面白い監督だった。ある試合で、新しい選手を使うために、俺がスタメンを外されたことがあった。危機感を持ちつつも、ベンチで不満げな表情こそ見せなかったけど、空元気を出してチームを盛り上げようともしていなかった。
 
 それで残り10分ぐらいになって、ストラカンが俺のところに来て、『ナカ、出たいか?』と聞いてきた。『なにを不満げにしているんだ』とは言わない。スコアはすでに7-0だったけど、俺は『出たい』と志願して、アグレッシブにプレーした。そうしたら、すぐスタメンに戻れた。
 
 だから、そこはストラカンも人を見ているんだよね。あの時、ふてくされた態度を取っていたらどうなっていたか分からないけど、結果的に俺は良い方向に進めたわけで、今振り返れば、そういう監督の手腕はさすがだなと思う」
 
■名波浩(磐田時代)■
「課題を見つけて、修正して。毎週毎週、その繰り返しだけど、名波さんはそのへんのマネジメントだったり、次に向かわせるための方向付けが上手いし、スムーズ。

 名波さんをはじめ、ヒデさん(鈴木秀人)やマコさん(田中誠)、木村(稔)社長や服部(年宏)さんとか"目が肥えている人"たちがたくさんいて、リズムを崩したり、メンタルに問題がありそうな選手をすぐ見つけては、絶対に見逃さず、引き上げようとする。そうやってチーム力を維持できているのも、強みのひとつ」

■下平隆宏(横浜FC時代)■
「一丸となって、総力戦で戦えているのは、下平監督だったり、コーチの人たちのおかげ。紅白戦とかで調子が悪かったら、すぐパッと代わるしね。集中しているのか、ゾーンに入っているのか、戦術を理解してターンしているのか、とか。下平監督は、そういうところを見極めていると思う。その見極めが凄い」

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 選手をいかに気持ちよくプレーさせて、成長を促すか。チームをいかに良い状態にして、試合に臨ませるか。そうした手法を経験豊富な指導者たちから熱心に吸収しようとする。

 それはもちろん、将来のためという側面もあるが、なによりもまずは監督の意図を理解し、ひとつの駒としてどう振る舞えばチームのためになるか、それを考えて行動に移すことを重要視しているからでもあるのだろう。ちなみに、サッカー界以外の一流からも学ぼうとしているのが、貪欲な俊輔らしい。

「落合さん(博満/元プロ野球選手)の本にも書いてあったけど、自主練に集中して、ハマっている選手を止めてはいけないって。それは俺も思う。止められたくないし、そこが一番、伸びている瞬間だから。自分の感覚を養う時間だよね」

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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